第2話 正解
今日も息が吸えなくて。
夜明け前の部屋は静かで、ヘッドホンから、現実から目をそらすための音楽だけが静かに流れる。
”助けて”という言葉だけが、どうしても言えない。
”大丈夫だよ”という嘘ならいくらだって出てくるのに。
言いたい言葉は、喉の奥でほどけて、崩れて、いなくなる。
「大丈夫?」
「頼って良いんだよ」
「助けてって言ってほしい」
優しい優しい言葉だけが、僕に届く。
でも、水の中にいるみたいに、ガラス越しの言葉みたいに。
手を伸ばして、掴もうとしても、指をかすめて、なくなる。
言いたいよ、僕だって。
言わないんじゃないんだよ、言えないんだ。
助けてって何度も言ったよ。
ずっと、ずっと、何度も、何度だって。
駄目だったよ。
誰も助けてくれないんだ。
そう思い込むしかなかった夜が、たくさん積み重なる。
心の扉を、きつく、固く閉める。
誰に頼ったって、誰も僕を助けてくれないし、救えないんだよ。
それに気づいてしまうと、もう、”たすけて”なんて言えない。
言葉は希望を連れてくる。
でも、拒まれたときの痛みも連れてくるから。
ごめんね、傷つけて。
「頼ってくれないことのほうが、辛かったよ」
「私じゃ、駄目だったんだよね」
君の優しい目を、手を、見れずに握れないまま、首を振る。
違うよ、君は、君はなにも悪くないんだ。
僕が悪いんだ。
頼れない僕が。
でも、ごめんね。
僕はこの生き方しか知らないの。
生きるために身に着けた癖は、簡単にやめることはできなくて。
君が見たい僕は、君が欲しい僕は”頼れる僕”なのかな。
あぁ、そういう考え方が駄目なんだよね。
じゃあ教えてよ。
素ってどうやって見せればいいの。
どうすればいいの。
自分の思いを、考えを、すべてを押し殺して周りに合わせてきた僕は、どうすればいいの。
変わろうとしない僕が悪いのかな。
助けてって言えるように変われば良いのかな。
そういう僕を作れば良い?
それが正解?
ねぇ、誰か、誰でも良いから。
僕に、正解を教えてください。
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