04. 婚約破棄
婚約者の
会社を出た俺は、マンションの部屋に帰る前に、着信を7回、メッセージを13通送った。
8回目の電話で、ようやく繋がった。
彼女は今、俺のマンションの前に来ているという。俺は、スーツの上着を脱ぐのも忘れて迎えに行った。
ベージュ色のワンピースに、ゆったりとしたカーディガンを羽織った依織は、ひどく怒っていた。
「信じられない。救急車の前に飛び出すなんて、常識ないにもほどがあるわ。幸い、お母さんは大事にならなかったけど。
私の荷物、持って帰る。ほら、鍵も返すわ」
動画という証拠がある以上、言い逃れはできない。
俺は、潔く謝罪した。
「悪かった。もうしないよ。仕事で急いでいたから、つい……」
依織は、ゴミにたかる虫でも見るように、淡いピンクのリップを塗った唇をゆがめた。
「仕事なら、許されると思っているの?
結婚して、なにか問題が起こって私が助けを求めても、あなたは『仕事だから』と言い訳して、助けてくれないでしょうね」
「そんなことないさ。今回は、たまたま、そう、運が悪かっただけだ」
どれだけ低い確率だと思っているんだ。
人生で、こんな偶然がそうそう起こるはずないだろう。
依織は、ぷいっと顔をそむけ、エレベーターに乗り込むと、俺を待たずにドアを閉めた。
俺がやっと自分の部屋に戻ると、彼女はさほど多くない私物をかきあつめて、大きな手提げバッグにしまい込んでいた。
「あなたとの婚約は、破棄させてもらうわ。慰謝料なんて払わない、当然よね?」
元婚約者の
その後、電話はつながらなくなり、メッセージはブロックされた。
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