02. 10億円の契約
営業職に定休日はない。営業日は、業務。時間外は、
それでも、この契約が取れれば、今週末は婚約者とお泊りデートする時間が取れるはずだ。
金曜日の午後2時。
俺、
今日の取引先は、関東でも名の知れた飲食店チェーン。ここにうちの機材を卸すことができれば、長期的な利益が確保される。初年度の契約金額だけでも、一年間の
だが、最後の詰めだからこそ、念入りに実行しなくては。
約束の場所にはゆとりを持って到着、身だしなみを整えて、受付嬢にも感じよくふるまう。社会人として、当たり前の行動だ。
俺はもちろん、渋滞を見越し早めに社を出た。
余裕を持ったスケジュールで動いていたのに、それを狂わせたのは、手土産を買うために寄ったデパ地下で、菓子屋の店員がミスをしたからだ。
普段なら、こんこんと説教して、何が悪かったのか教えてやるところだが、俺は店長に頭を下げさせると、急いで車に飛び乗った。美しくラッピングされた菓子折りを助手席に乗せて、運転を再開する。この先ICへの接続のため、混雑が予想されることを考えると、時間の余裕がほとんどない。
イライラしながらも、ネットニュースで時事情報を閲覧しながら、取引先本社の近くまで来たとき。
交差点に進入しようとしたら、一台の救急車が走ってくるのが見えた。
ほかの車は、窮屈そうに道の端に避けていく。
「ラッキー、運が味方したな」
そう思い、スピードを上げて交差点を突っ切った。
救急車なんて、営業で都内を走り回っていれば、一日に一台や二台程度はすれ違う。その程度の存在だ。
約束の10分前にコインパーキングに車を停めた俺は、急ぎ身だしなみを整え、手土産を携えて取引先を訪問した。
事前準備は正しく報われ、なんと契約金10億円を超える巨大な契約に、署名捺印をもらうことに成功した。
その日、勤怠アプリで直帰の報告を入れた俺は、ノルマ達成を祝って高いボジョレーヌーボーを開けたのだった。
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