第23話 特別なスコッチ

パーティー後、ペントハウスのドアの前——。


「おい、一杯飲んでけ。」


何度か中に入った事はあるが、いつ来ても凄い部屋だ。派手な装飾品は無く、重厚な趣きが一層とラグジュアリーな空間を生み出している。


「お前の殺しは12歳が初めてだったな。」


ジャスパーが自ら話した事はなかったが、べつに驚きはしなかった。

マッケンジャーが、ジャスパーの過去を洗いざらい調べ尽くしている事など当然だ。


ジャスパーは黙っていた。


マッケンジャーは、珍しくスコッチを飲んでいる。いつもはワインだ。

なにか"決めた"時に、スコッチを飲む。


「そんじゃあ、さっきの可愛い子…

あの子が、お前が守った子か?」


「へ?」


ジャスパーの口から思わず漏れる。


「へ?じゃねーだろ、さっきの子だよ。」


「いえ…パーティー中、誰とも話してませんが…?」


「お前が、こうやった子だよ。」


言いながら、マッケンジャーは、口に人差し指を当てる。


ジャスパーは、一瞬身震いがした。


(あの一瞬を見てたのか?

取り巻きに囲まれて話しながら、俺に背中を向けてたはずなのに?あの一瞬を?)


ジャスパーは、改めて、マッケンジャーを心底恐ろしい男だと思った。


ジャスパーは、固まったかのようになにも言えない。


グイっと飲み干すと、そのグラスにスコッチを注ぎ、ジャスパーに渡した。


「お前、来月で確か20になるな?」


リリーの話しを続けられると思い、全身に力が入っていた、ジャスパーは拍子抜けした。


「…はい。」


珍しく、マッケンジャーが夜景を眺める。

夜景を眺めながら酒を飲むなんて、絶対にしない男だ。


「16で俺のとこにきて、何人殺った?」


「……。」


「そりゃそうだ、数なんて覚えてらんねえよな。あんなもんの数を覚えてんのは、ただのサイコ野郎だ。」


マッケンジャーが振り返る。


「お前に、ドックサイドを任せる。」


マッケンジャーのオフィスがある、

クラウン・ディストリクトに次ぐ、二番目の眠らない街だ。


ジャスパーは、驚きと高揚でなにも言えない。


「これからは、もっといいとこに住め。

お前専用のいい車を買え。

金を稼ぎまくれ。」


(まだガキの俺をなんで…いや…)


「ボス、ありがとうございます。

必ず、期待に応えます。」


ジャスパーは、スコッチを一気に飲んだ。


ソファに腰掛け、その姿を見ているマッケンジャー。


ジャスパーが出ていくと、小さく呟いた。


「お前は、俺によく似ていやがる…」



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