第21話 それぞれの夜

エディは、いつも図書館に居た。


「やあ!エディ。」


にこやかに挨拶しながら、エディの隣に座る。


「ハドソンさん、こんにちは。」


立ち居振る舞いがスマートな男と、エディはすっかり顔馴染みだ。


学校のある日、エディは夕方から図書館に寄る。ハドソンも決まって夕方に顔を出す。

エディに会うのが楽しみのように——。


「ハドソンさん、三日振りですね。」


「あー、仕事が立て込んでいてね。

やれやれだよ…。」


「そうでしたか、大変でしたね。」


「んー、大変かあ…大変だけどね…仕事が好きだから、まあ大した事ないさ。」


エディは法律書を開き、

ハドソンは経済新聞に目を落とす。


(ハドソンさんは、いつもただの新聞を見ているな…きっと図書館には息抜きに来てるんだ)


エディは、ハドソンがどんな仕事をしているか知らない。

自ら聞く事はしない。ハドソンもまた、自らの事は話さない。


若者と中年が、並びそれぞれ読み物に耽る。


「おっと、私はそろそろ行くよ。」


ハドソンは、余程多忙なんだろう、スマートフォンは頻繁に鳴り、電話やメールで済まない時は、こうして去っていく。


「ハドソンさん、仕事頑張ってくださいね。」


ハドソンは、にっこりと笑った。



———


「今夜のパーティーにはお前もこい。」


後部座席から、マッケンジャーが言う。


「宜しいんですか?」


「ああ。」


マッケンジャーは、セント・クロウ、一番の繁華街にオフィスを構えていた。

建物は一階だけ、看板もない。

厚いコンクリートに覆われ、銃声すら拒むような佇まいだった。


「ボス、一度セントヒルに戻りますよね?」


「それは他のヤツでいい、お前は準備をしてこい。」


「わかりました。では、17時に迎えにきます。」


慈善パーティー。


(何が慈善だよ…)


予め調べていた、出席者の顔触れをみればわかる。

有名実業家に幹部、新鋭ITの起業家。

議員もちらほら。


(どいつもこいつも、自分が肥える事ばかり考えてる野郎ばっかりだ…)


なにかあると必ず、マッケンジャーに泣きついてくる。薬物、女関係、この三年の間だけでも、どれほど後始末をしてきたことか。


(ゴミなんだよ、この世界はゴミ溜めだ)


ジャスパーは、マッケンジャーがパーティーに出席する理由をわかっていた。


「まだ知らない友達」を作るため——

即ち、マッケンジャーの新たな餌食になる連中を。


——マッケンジャーの餌場だ。


ジャスパーは、高いスーツばかり着るようになっていた。

マッケンジャーの教えだった。


「人は見た目じゃない。

フッ…お前は、そんな事わかってるよな。

でもな、頭が悪く金だけを持ってる連中は、まず人の着てるもので品定めをする。」


ジャスパーは、高いスーツにも高価なブランドにも興味なんかなかった。

ただ、マッケンジャーが言わんとする事は理解できた。


そこそこ家賃の高いアパートへと一度戻る。


手持ちの中で一番高いスーツを着、ネクタイを締めた。ピカピカに磨かれた靴に履き替える。


(俺は、ここまできた。でももっとだ。もっとだ!)

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