第20話 知ることと耐えること

ジャスパーは、今でも必ず週に一度は、

「秘密の訪問」をしていた。


夜の時もあれば、昼の時もある。

ただ、二人が暮らす「家」に変化はないか、

それを確認するだけだった。


エディとリリーが通う学校も、当然知っている。

だが、待ち伏せなど、絶対にしなかった。


(今は、まだダメだ。)


———


エディは、ほとんど毎日、

学校帰りに図書館へ寄っていた。


ウォール・ディストリクトに近いその図書館には、

法曹関係の書籍が、見事なまでに並んでいる。

エディは、判例集を手に取り、席を探した。


(今日は、混んでるな)


一番近くの、一つ空いていた席に座る。

判例集のページが次から次に捲られていく。


(この事件…こんな判決?間違っている…)


過去の判決を読み漁り、自分の中で正解か不正解かを出す。

時には表情に怒りが現れる、別の判決では悲し気な表情を浮かべる。

取り憑かれたようにページを追う


「それ、判例集かな?」


エディは、びっくりした。そっと横を向くと、50代くらいだろうか?ダークネイビーのスーツがよく似合っていた。


エディは、びっくりしたまま返事ができない。


「いやいや、ごめんごめん。いきなり悪かったね。将来の夢は弁護士か検察官かな?

君のような子供が読むにしては少し早いと思ってね。」


白い歯が綺麗だった。


落ち着きを取り戻し、答えた。


「…そうかもしれませんね。

でも、今からしっかりと勉強しなきゃいけないんです。」


「よくここに来ているよね、何度か君を見掛けたよ。歳は?」


「16歳です。」


「若いなあ!いや、羨ましい!」


男は嫌味のない、本心で言っているかのような笑顔だった。


男は、まだエディと話したそうだったがスマートフォンに、なにやら連絡が来たようだ。


「勉強の邪魔をして、すまなかったね。

では、また!」


椅子を直してから本を戻し、男は早歩きで去っていった。少し変わった感じの雰囲気とは裏腹に、エディには全ての立ち居振る舞いがスマートに見えた。



———


「きゃー!」


リリーの悲鳴で、ジェシカが飛んできた。この夜は出張続きだった、夫のニコラスも居た。


「リリー?リリー?悪い夢を見たの?」


心配する夫妻。

脈を測ると150くらいあったので、慌てて薬を飲ませた。ベンゾジアゼピン系の中でも速攻性の高い頓服薬だ。


夫妻は、リリーが再び眠りにつくまで傍に居た。

リビングに戻ると、ジェシカは泣いた。


「まだ15歳なのに、あんなに薬漬けで…

あの子はどうなるの…」


夫妻はもちろん「事件」の事は承知済みだ。

おぞましい内容を全て聞き、夫婦で何度も話し合い、リリーの里親になると決心した。


「ジェシカ、さあ、落ち着いて。最近僕が仕事が忙しかったから、ごめん。

リリーを支えるって二人で決めたじゃないか。

これからは、出張でも帰れる距離なら必ず帰るよ、さあココアでも飲もう。」

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