第19話 確認は終わった

ウォール・ディストリクトにそびえる、立派な高層ビル。

その一角にあるオフィスの一室——。


午前二時。


男は、椅子に座ったまま震えていた。


「私が……ボスを裏切るわけないだろ!

ジャスパー、信じてくれ!」


会計士のジョナサンとは、これまでに何度か顔を合わせている。


「あんたが盗人だなんて、正直俺も信じたくなかったよ」

ジャスパーは淡々と続ける。

「だって、ボスのおかげで、もう十分すぎるほど金持ってるだろ?」


「だから、分かるんだ」


次の瞬間、拳が飛んだ。


鈍い音が室内に響く。


「強欲なやつはな、どこまで行っても強欲なんだ」


「ジャスパー……頼む……!」


言葉を遮り、ジャスパーはジョナサンの左手を掴み、

指を三本、迷いなく折った。


絶叫。


「次はな、今のが楽だったって思えるくらいのが来る」

低い声で告げる。

「裏帳簿を出せ」


ジョナサンは泣きながら頷き、金庫を開けた。

取り出したUSBを、震える手で差し出す。


「……確認する」

「パソコン、開け」


命令されるまま操作するジョナサン。

ジャスパーはUSBの中身を確認し、用意していた自分のUSBへデータを移した。


「……俺は……どうなる……?」


涙と鼻水で顔を歪めながら、ジョナサンが尋ねる。


「大丈夫だ」

ジャスパーは、穏やかな声で言った。

「こんなことで殺すほど、うちは暇じゃねえよ」


安堵が、男の全身を抜けた。


「それに、あんたにはまだ働いてもらわなきゃならねえ」

「ボスには、二度とやらないって誓ったって伝えておく」


「……ありがとう……」


ジャスパーは、笑顔を浮かべたまま部屋を出ていった。


——その日の朝から、

会計士ジョナサンの行方は、誰にも分からなくなった。

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