第13話 掠れた声
セントヒルタワーの支配人の部屋に、ジャスパーはいた。
「名前は、ジャスパー・テイラー、
18歳か…大学へは進学していないのか…」
ジャスパーは歳を誤魔化していた、
臨時とはいえ、さすがに16歳は使ってもらえないと思ったからだ。
支配人の、スミスは履歴書を見てる。
「ドアマンが親が倒れたとかで、
故郷に帰る事になってね、急な事で、
こちらも困っているんだよ」
(すげえ、高そうなスーツ着てんな)
「高校は…、ほう、随分と出身は遠いんだね」
履歴書には、合衆国の一番外れにある、
田舎にある、高校卒業と書いた。
あんなに通い、しかも田舎の高校じゃ、
名前を知らなくて当然。
(まさか、パソコンで調べたりしねーよな、
臨時のスタッフごときに、そこまでしねえでくれよ、おっさん)
スミスは、初めて真っ直ぐにジャスパーを見た。
ジャスパーは明るめのブラウンの髪、
瞳はダークブラウン。
目鼻立ちは綺麗で、背も180近くある。
誰が見ても惚れ惚れするハンサムだ。
今日は、少しだけ高いスーツを着てみせているが、驚く事は、ジャスパーはスーツが、
とても似合う。
スミスは吟味していた。
(こいつも変態じゃねえよな)
「よかろう。
我がホテルは、従業員の容姿も採用項目に入れるほど、従業員の見た目も大切だ。
なにせ、お客様は億万長者ばかりだからな。
君のように、若くハンサムなドアマンが居れば、ご婦人方も喜ばれる事だろう」
スミスは続ける。
「一時的ではあるが、採用だ。」
どこかに電話をし、誰かを呼びつけているようだ。
スミスの元に来たのは、ロバーツという、
いかにも規律に厳しそうな男だ。
「ロバーツ、今日からドアマンに入ってもらう、テイラー君だ。早急に仕事を教えておくように、それとマナーも」
「わかりました、短時間でなるべく覚えさせます、さあ、行こう」
「スミス支配人、
失礼いたします。」
ロバーツは、綺麗にお辞儀をして、
ジャスパーを連れていこうとした、
その時、
「スミス支配人、臨時とはいえ、雇っていただけた事に、心より感謝を申し上げます。
ありがとうございます」
そして、スミスが驚くほど、
美しいお辞儀をした。
(ほう。これは素晴らしい人材だったようだ)
ジャスパーは、ジョンが仕事の話をもってくるまでの半年間、必死にマナーや言葉遣いの勉強をした。
もし、セントヒルタワーで仕事ができなくても、必ずこの先、生きるからだ。
ドアマンの燕尾服に着替えた。
ロバーツにフロアを案内される。
ドアマンの仕事の仕方もマナーも、ロバーツが教えるまでもなかった。
「君は、以前それなりのホテルで仕事をしてたんだね?」
「いいえ、亡くなった祖父が高級ホテルのドアマンをしていたらしく…ホテルの名前は忘れましたし、どの街でかも知りませんが、よくいろいろと教えてくれました」
ジャスパーの詰めはいつも完璧だ。
「それは素晴らしい。では頑張りなさい」
「はい」
22時頃に、ホテル前に、黒塗りの凄い車が三台続けて止まった。
ロバーツから、聞いていた。
「19時から23時の間に、黒塗りの車が三台止まり、ボディガードが出てきたら、
その方は、マッケンジャー様という、当ホテルの、最重要なお方だ、
くれぐれも粗相をするんじゃないぞ」
(マッケンジャー!)
前方と後方のドアが開き、中からボディガードが先にドアまでの道を囲う。
真ん中の車の運転手が降りて、後部座席を開ける、中から、マフィアのボスが降りてきた。
ゆっくり歩いてき、ドアまで来た。
「おかえりなさいませ。
マッケンジャー様。」
美しくドアを開け、優雅な一礼をした。
「ありがとう」
掠れたような低い声。
「君は、今日、初めてお会いするね」
「はい。本日より、ドアマンを務めさせていただく事になりました。
これからは、私にもなんでも、お申し付けくださいませ」
美しい一礼。
「わかった、ありがとう」
これがマフィアのボス、
ニック・マッケンジャーとの出会いだった——
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