第12話 それぞれの毎日

バーでの、ジョンとの会話から半年が経っていた——


ジャスパーは16歳になり、

薬の売買や三流娼婦が客待ちで並ぶ、ストリートを歩く。


「ジャスパー!調子はどうだよ?」


「ジャスパー、この前はありがとな!」


チンピラ達が、ジャスパーに手を振る。

ジャスパーは、手だけ上げて歩いてく。


貧困層が住む、この辺りのスラム街では、ジャスパーは有名人だ。

スラムを取り仕切るギャングとも顔見知りだが、

どこにも属さない。


敵対するギャングとの小さな抗争が起きれば、

あくまで“個人”として参戦し、恩義だけを残して去る。


囲い込もうとする者もいたが、

ジャスパーは必ず一線を引いた。


小さな積み重ねで、

確実に大物への片鱗を見せていた。


(俺はスラムのギャングなんか眼中にねえ、

俺はマフィアの大物になるんだ)


「ジャスパー!電話したのに出ろよ!」


後ろから、ジョンが駆け足でやってきた。


「わりい、気づかなかった、なんか用か?」


「さっきダチから連絡がきてよ、例のセントヒルタワーで仕事があるってよ!

ドアマンの仕事らしいけど、どうする?」


「やる。

助かったぜ、ありがとうな」


ここで「貸しだぜ!」と、ジョンが言えないのは、既にジャスパーに沢山借りがあったからだ。

人に貸しをつくる、人に恩を売っておく。

ジャスパーのやり口だった。


———


エディは、中流家庭より少し裕福な家庭が通う学校にいた。

成績は学年で常に一位。


「エディ、帰りに図書館に行こうよ!」


気の合う友達もできた。


友達の名はデイビッド。

二人で図書館へ向かう途中だった。


前方から男が歩いてくる。


(こいつ…なにかする)


男は、エディたちの前を歩いていた老婦人とすれ違いざまにバッグを奪おうとした。


友達は、怖くて固まっていたが、

エディは違う。


「やめろ!離せ!」


男からバッグを引き剥がす事に成功する。

男は直ぐにその場から逃げようとしなかった。


(銃を持っていたら、どうしよう)


怖かった。

でも、ふいに口が開く。


「あなたは、この女性からバッグを奪っていない。バッグは女性の手元にあります。

だから、今なら…」


男は、舌打ちをしながら走り去っていった。


「大丈夫ですか?怪我はありませんか?」


「…ありがとう。なんて勇敢な少年なの…」


老婦人は、どうにでもなにかお礼をさせて欲しいと言うが、

エディは丁重に断った。


翌日、デイビッドがその話しを皆にし、エディは賢さと勇気を併せ持つ、ヒーローのような存在になっていった。


———


リリーは、富裕層の娘が通う女学校に通っている。

友達は誰もおらず、いつも一人で過ごしていた。

一人でいても、意地悪をされないのは、

リリーがカウンセリングを受けている事を、誰かが知り一気に広まったからだ。

そう、リリーはあの事件以降、今でも週に一回はカウンセラーに会わなければいけなかた。

抗不安薬も処方されている。


皆んな、リリーが不気味で意地悪どころか近づきもしなかった。

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