美冬×賢人

 物件の契約と、家具探しの帰り。


 賢人けんとの家に2人で戻る。


 必要のない荷物は、彼の家に置かせてもらった。


 来月、卒業旅行が終わったら、先程契約した家に賢人と2人で住むのだ。


 LDKの部屋。


 収納も広めで、リビングも広々なので、とソファー等も置いて癒やしの空間に出来そうだ。



 学部こそ違うが、大学は同じになる。


 生活リズムも、賢人のアルバイト次第だが、問題はないはずだ。


「お疲れ様!


 いろいろ説明聞いて、重い物も持ってもらって、疲れたでしょ。


 チョコサンドクッキー、良かったらどうぞ」


「お、美冬みふゆの手作り?


 ありがとう。


 毎年凝ったもの作ってもらって、悪いな。


 美冬なら、いい奥さんになれそう」


「ねぇ、その台詞、今言う?」


「ん?


 今言っちゃダメなの?


 こういう台詞は、言いたいときに言わないと」


 そんな台詞、ズルイよ。


 甘えたくて、身体が疼いてきちゃうじゃん。


 賢人に唇を重ねようとした時、彼の携帯が鳴った。


「親父?


 今?


 家にいるけど。


 ああ、美冬もいる。


 こっち向かってる?


 分かったよ。


 気を付けてな」


「美冬」


 賢人の方から、軽く口づけをされた。


「イチャイチャは後でな?


 親父が来るって。


 俺たちに渡したいものがあるらしい」


 今日は思いきりイチャイチャする気でいたのに。


「2人で住めば、飽きるまでイチャイチャし放題だよ?


 もう少しの我慢。


 ね?


 可愛い美冬なら、分かってくれるよね」


「もう。


 何か、秋山あきやまくんとか麗眞れいまくん辺りが言いそうな台詞よ、それ」


「本当のことなんだから、いいじゃん」


 そんな中、インターホンが鳴り響いた。


 賢人のお父さんが来るなんて、聞いてなかった。


 聞いてたら、ブルーのデニムパンツに黒のオフショルニットなんて格好、してこなかったのに。


「おおー!


 美冬ちゃん、いらっしゃい!


 クリスマスのプレゼント、ありがとうね。


 ネックウォーマーと手袋、ロケ先で使わせてもらってるよ。


 おかげで、トレードマークみたいになってね。


 新人にも覚えてもらいやすいんだ。


 プレゼントのセンスが良い彼女を持てて、賢人は幸せ者だな。


 もう大人なんだし、籍入れてもいいんだぞ」


「親父。


 美冬を誂うなよ。


 美冬のアナウンサー生命に影響しないように、時期は考えないとマズイからな」


 賢人はそう言ってから、オノケンさんの近くで何かを伝えた。


 そのやり取りが終わると、私は忘れまいと、オノケンさんにもチョコサンドクッキーを渡した。


「手作りのセンスもいいんだな。


 ありがとう。


 後で味わって食べるよ。


 賢人を通じて、クリスマスプレゼントと今回のクッキーの分、何かしらお返しはするよ。


 それに、大学入学のお祝いもまだだったしな」


「いいんです。


 保証人にもなっていただいてますし。


 賢人さんを通じて、家賃や生活費の援助までしていただいて。


 これ以上、ご迷惑をおかけするわけにはいきません。


 まだ正式には、家族ではないわけですし」


「私はもう、家族のようだと思ってる。


 美冬ちゃんだけじゃなくて、美冬ちゃんの母親もだ。


 それに、何年先かは分からん。


 タイミングは美冬ちゃんと俺の倅に任せるが。


 家族にはなってくれる、その気持ちは変わらないんだろ?


 それで充分だ。


 理由としては物足りないか?」


 他人からこんなに優しい言葉を掛けられたのはいつぶりだろう。


 気付くと、頬に雫が伝っていた。


「おい親父。


 美冬泣かせんなよ」


「違うの。


 ちゃんと、私を支えてくれる人がいるのが嬉しくて。


 無理せず、頑張ろうね、賢人」


「イチャイチャを邪魔するのは主義じゃないから、そろそろお暇するわ。


 今度お祝いの品は送るからな!


 宅配便を送る前にはきちんと言うから、受け取り拒否はしないでくれよ!」


「この間のクリスマスも、そんなことしなかっただろ。


 心配しなくても大丈夫だよ、親父」


「クリスマスのオードブルとケーキ、ありがとうございました!


 とっても美味しくて、記念にSNSにあげちゃいました」


「映えそうなのを選んだからな。


 気に入ってもらえて何よりだよ。


 賢人、美冬ちゃんと仲良くな。


 美冬ちゃん、こんな倅だけど、支えてやってくれ」


 それだけを言うと、賢人のお父さんは、風のような速さで家を出ていった。


「泣いてる美冬、可愛いから理性保たなそう。


 優しくするから、いいよね?


 美冬も疼いてそうだし」


 賢人の言葉にゆっくり頷く。


「会えるの、楽しみにしてたの。


 眠れなくなるくらいのがいいな。


 ダメ?」


「美冬、可愛い。


 いくら抱いても足りないくらいかも。


 愛してるよ、美冬」


 唇が優しく重なった。


 これから始まる新しい生活を支えてくれる賢人。


 彼とその父親へ、精一杯の愛情を込めて。



 ハッピーバレンタイン。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

チョコより甘い恋を。 櫻葉きぃ @kii_chan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ