第2話 魔王様からお説教……泣いてるくね?

「……」

「め、メイメイ、また暗殺に失敗したのか……?」

「……はい」


 黒く禍々しいオーラを放つ玉座に座るのは、かの悪の根源と呼ばれている「魔王様」だった。

 震える声で私に問いかける。

 だってしょうがなくない?普通に強いんだもん。あの人。

 すると次第にうずくまり始めた悪の根源。


「どうしようどうしようどうしよう……我、もうそろそろ怖すぎて死にそうなんだが……」

「……すみません。でも、どうして魔王様ご自身で手を下さないのですか?」

「我の右腕であるお前が……ことごとく毎回負けている相手に勝てるとでも……?」


 いや、そういうことではなくね?お前の方が私より何倍も何百倍も何億倍も強いはずだぞ?悪の根源だろ?なんで?

 ため息をついた魔王様がまた漫画を読み始めた。最近魔王軍うちの間で話題になっている作品だ。持ち込んだのは私。

 内容は「魔王討伐する勇者」と、かなり攻めたものなのだが魔王様曰く「伏線とかキャラ設定が最高!!」とのこと。

 検閲されなかっただけまだいいのか……。

 いや、そういう話じゃなくて。


「じゃあ、私はこれにて失礼しますよ〜」

「おお、早めに我のために勇者暗殺しとけよ〜」

「……相変わらず去り際の言葉が物騒なんよな……(ボソッ)」


 バタンと扉を閉める。

 そしてズルルッと壁に張り付く。

 魔王軍は、意外と平和である。歩兵の首無騎士デュラハンたちは「死んでも屍から生き返るから恐怖なし!」なんて狂った感性持ってるし。

 うちの砲撃部隊の呪術師シャーマンは毎朝みんなを叩き起こしに回っているし。

 豚人間ゴブリンの調理長だって、クソ美味い飯作ってくれているし。

 そんな魔王軍を脅かそうとしているなら、勇者は相当危険なのかもしれない。

 彼らに正義があるように、こちらにだって正義がある。

 でも、それを分かち合えないんだよねぇ……難しい。


「……あれ?メイメイじゃん。なんでこんなところにいんの?」


 廊下の壁で無我の境地へ旅立っていた私に、誰かが声をかけた。

 その声は確か、魔王軍に入隊してまだそんな経っていない頃からずっと聴いていた声……。

 顔を上げる。そこには、長い髪を一つに結んだ男。


「げっ、悪役アピール厨二病マン」

「だから、その呼び方をやめろって。僕の名前はエン・レイスだって」


 頭に手を当てている彼は、魔王軍作戦司令部の総長悪役アピール厨二病マンである。

 二つ名を、エン・レイス。

 彼は私のお世話担当である。本人は「エロ可愛い美少女を世話できるのならいい!!」と息巻いていたらしい。キモい。


「そんなに僕のことを悪く言うんだったら、君の太ももを揉んで噛んで舐め回しちゃうけど?」

「やだ。変態。魔王様にチクる」

「くっ、失敗か……クソッ」


 エンは悔しそうに歯噛みする。誰がこの御神体を触らせるものか。

 私はエンにあっかんべーをして逃げ去るようにして走り出す。エンは魔法専攻だからこの速さについてこれるもんじゃない!

 魔王様のお屋敷は広大だ。だから逃げ回るなら曲がり角をいくつか曲がって撒けばいい。

 ちなみに庭付き、運動場付き、4階建のバカ広い敷地……魔王様実はただのお金持ち説。





「暗殺諜報担当のメイメイ、只今参上いたしました!」

「違う、諜報暗殺担当な」

リーダーはやっぱ口煩いですね!そんなんどうでもいいじゃないですか」

「いや、自分の役職ぐらい覚えて置くのが正当の心構えだろう?」

「そうですかね?」


 私は、魔王軍指揮本部に呼び出しを喰らっていた。顔を出すに始まらないので、とりあえず応じる。

 そこには軍内で規律にもっと厳しいとご評判のプルス・ウォーマー指揮官が居た。

 もっと詳しく言うなら、「魔王軍諜報暗殺担当作戦部隊」の最高司令官である。

 つまりは私の上司。


「で、私を呼び出して、なんの用ですか?」

「今度勇者が近所の村に進軍してくるらしいんだよ」

「はあ、で、私に行けと」

「まあそう早まるな。お前には帝国の司令部に潜入してもらって、みかどに関する秘密情報を盗んでほしい別任務があるんだよ。で、その帰りに勇者を襲ってほしい」


 面倒ごとが一個増えただけじゃねえか……。まあいいや。

 私はポリポリと頭を掻きながら、承諾した。


「とりあえず行ってきますわ……」

「了解、決行日時は今夜五時、帝国官僚議会入り口にてまた会おう」

「え?リーダーも一緒なんですか?」

「不満か?」

「……いえ」

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魔王軍諜報暗殺担当ダークエルフ、メイメイです!勇者を暗殺したいんですがドキドキさせられて毎回失敗しています!お前らよろしくお願いします! 狐囃もやし_こばやしもやし @cornkon-moyashi

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