第2話
「ねぇ、本当なの…?」
薄暗い姉の部屋で私は、姉から話される真実を待ち望んでいた。姉は目を見開き、驚いた顔をした。しばらくして俯き、口を開いた。
「…責めてくれて構わないわ。でもね、これだけは覚えておいて。あなたのためだったのよ…。」
その声は低く、とても姉のものとは思えなかった。
私のため…?
「え?どういうこと?私は関係ないでしょ!?」
意味が分からなかった。何でここで私が出てくるのか。だって相手は、私の知るはずのない姉の同級生だったのだから。
「私はね、あなたになりたかったのよ。いつからだろう…。あぁきっと、あなたを守ろうと誓った日から…」
とても悲しそうな顔をした姉は、涙を拭うような仕草を見せ、立ち上がり、机の引き出しを漁り始めた。木製の作りのはずなのに、重い鉛のような鈍い音をたてながら、引き出しは開いていく。その音を聞きながら、私は10日前のあの男の声を思い出していた。
事の発端は10日前、学校から家に着いたとき、家の前に見知らぬ人がいたことだった。ダボッとしたジーパンに、明るい茶色のジャケットを着たその人は私に気が付くと、駆け寄ってきた。
「突然すみません。あかりさん…で合ってますか?」
近づいてきたため、遠くで見た時より、剃りきっていないヒゲや寝癖のついた髪が目立った。
「えっと、あの…どちら様でしょうか?」
警戒していることが伝わるように話した。すると、
「あ、失礼。私リグレット新聞の記者をしております、八重塚と申します。あかりさんにお話を伺いたく、訪問させていただきました。」
そう話したその人は、胸ポケットから名刺を取り、差し出した。その名刺には確かに、「リグレット新聞社、記者:八重塚とおる」と記されていた。
「なんで私に?」
「2年前、お姉さんの同級生の方が亡くなられたのはご存じですか?」
八重塚と名乗る男の顔つきが変わった。男のかけていたメガネの奥の瞳が鋭くなる。
「あぁなんとなく。それが何ですか?」
そう。2年前、姉の同級生が亡くなっていた。限りなく自殺に近いというニュースがリビングに流れていた。可哀そうだな、と思ってニュースを見ていると、姉が凄くショックを受けたような顔をしていた。
「そのことについて、詳しくお話を聞かせてもらいたいんです。」
「私が話せるようなことはないとおもうんですけど。」
何で私なのだろう。しかも2年前のことを今さら…。私は何も知らないんだから、どうせ聞くなら姉に聞けばいいのに。
「私、2年前もお宅を伺ったんです。あかりさんのお姉さんに話を聞くために。でも全く話してくれなくて。」
その時を思い出したのだろう。八重塚は困ったなという顔をした。好奇心を隠しきれない子供のようにも見え、鋭い目つきをし、見透かしているようも見える。何なのだろう…この男は。
「何で姉なんですか?その亡くなられた方と仲良かったとかっていう話は聞いたことないんですけど。」
不思議に思い、たずねた。
「…自殺だったという事は知っていますか。私、あれは自殺なんかじゃないと思うんです。つい最近新しい情報が入りまして…。」
「情報?それが姉と関わりがあったんですか?」
「何してるんですか?」
母の声だった。
母が買い物から帰って来ていた。
「あ、私リグレット新聞の者でして…」
そういい、八重塚が名刺を母に差し出そうとすると
「帰ってください。勝手に娘に…困ります。」
静かな住宅街に母の冷たい声が響いた。いつも穏やかな母の顔が、このときは鬼のように見えた。
「失礼しました。…また伺いますね。」
そう言い残し、男は去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます