愛する人のため
たまご
第1話
「誰かの私でありたかった」
この言葉が、私を一番説明できていると思う。いくら、自分のためにと言っても、結局は誰か人にすがらないといけない。寄りかかりたい。認めてほしい。そんな馬鹿げた、けど嘘偽りのない、思いをもっている。
今日は澄んだ青空が広がっていた。桜の木が今か今かと、春を待ち望んでいた。小鳥が一羽私の前を横切った。目で追って、そのまま空を見上げた。
そして、私の他にもう一人同じ景色を眺める者がいた。
「本当に、良かったんですか。」
細身で、前がちゃんと見えているのかも分からない長い前髪の男だった。私はその男の気配が感じられず、気味が悪いと思った。
「今さらですよ。良かったかなんて分からない。」
男の方を向いて答えた。相変わらず読めない人だと思った。笑っているのか、悲しんでいるのか…。それも今さらか。
「そうですね。でも私は少なからず、後悔はしてませんよ。」
その時、生あたたかい風が吹いた。花や草木が音を立てて揺れた。私の下ろしていた髪も、無造作に宙へ舞い上がった。
そしてー。風がだんだん弱くなった一瞬、長い前髪の間から、顔が見えた。穏やかに微笑んでいた。本当に気味が悪い。
「なら…いいですけど。」
「はい。」
男の声が弾んでいた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます