第4話 ホームルームアフター③
『ーーーふーん、気付いたら白峰さんに一目惚れしてた、ねぇ。まぁ、恋のはじまりにしてはありふれたやつって感じだけど、[今恋愛に興味無いからすみません]って去年うちの文化祭でミスコン優勝した先輩バッサリフッた"あの"とおるが一目惚れって言うんだから、面白い話だよねー』
『はっきり面白い言うな』
『怒らないでよー。それだけホンキってことだもんねー?いやぁ、青春だなぁー』
ジジ臭い台詞を言ってズルズルとラーメンを啜る斜め前の男を睨む。3人から圧迫面接されているみたいに洗いざらい吐かされたこちらの気も知らないで、呑気なものだ。
『くろちゃん、俺、応援するから!良さそうな雰囲気になった時のヤジフォローは任せて!』
『透、オレも応援してるぜ!男は気合いだからな。気合い入れてほしいときはいつでも背中を叩いてやるよ!』
『応援は有難いけど、頼むから一歌は大人しく、翔は右腕の力を封印しといてくれ』
力になると言ってくれる友人達に喜べばいいのか、変な方向に頑張りそうなコイツらを抑える苦労に嘆けばいいのか、複雑な気持ちだ。
『俺のことも頼りにしてくれていいからねー。俺にはたくさんの女の子の知り合いがいるからさぁ、今女の子の間で流行りの食べ物や曲、デートスポットまで何でも情報提供してもらえるからねー』
『すごい!けーちゃん一人で百人力じゃん!』
一歌に大袈裟に褒められた圭はへにゃりとだらしなく笑い、『いやぁ、照れるなぁー』と頬を掻く。
『そういえば、何で俺が恋したとか言い出したんだ?俺にさっき聞いてきた時にはほぼ確信してたんだろ?』
少しスープが温くなった麺を啜りながら、正面二人を見やる。一歌はどうか分からないが、この二人は気付いていたっぽい会話を直前に俺を挟んでしていたのだ。二人に俺の心の中を覗く超能力があるということはないだろうし...一体、どこからその確信を?
『んー、俺がおやっ?て思ったのは、『白峰さんの自己紹介が終わった後もずっととおるは白峰さん見てるなぁー』、『あれっ、なんか顔赤くなってない?』って気付いた時だねぇ』
『オレも圭と同じだな。オレ今クラスでの席が一番後ろなんだけど、最前列の奴が自己紹介してんのに一人だけ後ろ見てる奴いるなと思って見たら透で、透の視線の先が白峰だったから『そーいうことか』って気付いたってワケ』
(自分で思っていたより全然バレバレじゃねぇか!)
恥ずかしくて心の中でのたうち回る。体は冷静に目の前のラーメンを啜っていたが、顔がじんわり熱を持っているのはきっと、ラーメンの熱さだけのせいではない。
『で、一目惚れって具体的にはどこにビビッときたんだ?やっぱ黒髪で高身長なところ?いつも誰かが持ち込んだエロ本みんなでこっそり見る時、どの子がタイプか話すと透はいつも黒髪で背が高めの子選んでたよな?』
翔のぶっちゃけた話に他二人は『確かに〜』と声を揃える。俺は唐突に始まったセクシャルな話題にゴホゴホッと咽せてしまったので、とりあえず水を飲んで落ち着きを取り戻そうと努めた。
(コイツら、何気に日常で話した些細なこととかもよく覚えてんだよな...)
俺もどちらかといえば覚えている方だが、まさかエロ本に関する話題までだとは...。モラルやデリカシーはある連中なので、その件についてを周囲に言いふらすとは思わないし信頼もしているが、『わざわざそんなことまで記憶すんなアホ共』とは言わせてくれ。
(でも、好きなタイプか...エロ本見てどれって聞かれた時は適当にパッと一目みて選んでたけど、考えてみれば確かに...)
『...まぁ、確かに金とか染めてる子よりは、傷んでなさそうな綺麗な黒髪の方が好きだし...背の高い子の方が大人びてていいなって思う...けど』
『『『けど?』』』
興味を隠しきれない真剣な表情で俺の顔を覗き込んでくる3人。
ふと思い出すのは、今日の教室での一場面。凛とした立ち姿の後に彼女がみせたーーーふんわりと柔らかに目元をしならせ、ほんのり桜色をのせた唇を手で隠しながら笑う、姿。
『...凛としてて綺麗なのに、笑顔が可愛いかったから...俺にもっと笑ったかお、見せてほしくなった...から』
だから、好きだって思った。
俺のものにしたいって、本気で思った。
『いや、甘すぎ!!王道の少女漫画じゃん!一回も読んだことないから知らないけど!』
『いやぁ、これは糖分過多だわー。マジ、キュンですってカンジー』
『なんか口の中が甘くなった気がすんぞ!オレ、もう一杯ラーメン食べれそうだわ』
俺にとっての人生初恋バナ(野郎しかいない)はやっぱり緊張するし、赤裸々に告白するのは思春期というのもあって恥ずかしい。羞恥から顔が茹って堪らないが、気の抜けるコメントばかり並べる友人達には少し助かった。アホな内容ばかりの返しではあったが、重く受け止められるよりは、これぐらいフラットな方が気が楽だ。
気休めにしかならないが、パタパタと手で顔近くを扇ぎ、風を送る。こんなにも沢山赤面したのは久しぶりではないだろうか。普段心に波風を立てないように立ち回る癖がある分、反動でうまく感情を落ち着けられず、なかなか熱は引いていかなかった。
『それで、とおる。作戦はどうする?』
完食したラーメン丼ぶりとチャーハン平皿を横に避けて、かの有名なゲンドウポーズをとった圭が低めの声音で唐突に問い出す。
『は?作戦って何のこと?』
これには俺以外の二人も首を傾げている。
圭は作戦について何も分かっていない3人を見回し、ヤレヤレとアメリカンに肩をすくめてみせた。
『何ボケっとしてんのさー、とおる。それに他二人も。よく考えてみてよ。一学期始めの時期に同級生、しかも同クラに好きな子が出来たらさ...何が何でも勝ち取らなきゃいけないものがあるよねー?』
『あー、恒例の学期始めの席替えで隣の席とか?』
[勝ち取らなきゃいけないもの]でとりあえず思い当たったものを言ってみるが、『違う』とバッサリ切り捨てられた。
『席替えなんて、くじ引きの引き次第の所詮"運"だからねー。神なんて全く信じてないけど、備えて出来ることなんて実際神頼みくらいじゃない?』
シビアな意見だが、そりゃそうかと納得。しかし、その言い方では[作戦が上手くいけば好きな子に接近できる"何か"を確実に勝ち取れる]と言っているようにも捉えられる。
一体それは何だと俺達3人がザワザワしているのを察したのか、圭はコホンと咳をこぼして注目を集めた。
『勝ち取らなきゃいけないもの、それはズバリ...』
『『『それは...?』』』
『ーーー...委員会決めで同じ委員会に入ること!』
ーーーあの時はマジで、コイツ天才かと思った。
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