終章:The elect a Rikka

Uのアジトからどのように帰ったのか、わたしはほとんど覚えていない。

思考を止めたいという防衛反応が時間差で作動したのかもしれない。



ふと我に返ったとき、わたしは独りで書斎にいた。


真実を知る者として、わたしは声を挙げるべきなのだろうか?

もっとも、それは人間が勝手にやればいいことだろうか?



何も分からない。


人間的に表現すると、わたしは長時間“ぼんやりと”しており、気づけば数日が経過していたのだ。



メールの着信で目が覚めたわたしは、宛名に驚いた。

ジェフからの連絡であった。


とはいえ、急いで駆け付ける気力すらなく、彼の所までゆっくりと徒歩で向かった。




「エレク、待ってたよ。メメントモーリ」


わたしは彼に促されるまま、例の薄気味悪い客間へと入る。


片付けられたテーブルの上には我々には馴染みのある部位、『頭脳ユニット』が置いてあった。本来のわたしであれば、ここである程度推理ができたのだろうが、到底無理だ。



ジェフは最初の挨拶以外、何も言わずに小さな封筒をわたしに寄越した。

中には1枚の手紙。



≪エレクへ

 これは私がジェフに依頼したものです。彼を責めないで欲しい。

                          亜里香≫



手紙を読み、顔を上げる。


ジェフはいつになく神妙な面持ちで静かにこう言った。


「彼女の遺志だ。

 そのユニットを人間社会に突き出すもよし、お前さんが持ち帰るもよし。

 ……その気になれば、適当な義体に再移植だってできるぞ。どうする?」



わたしは言葉が出なかった。





「そうか。これがアリカの最後のなんだね」



ユニットを持ち上げると、わたしはジェフに深々と頭を下げ自宅へと戻った。


「エレク、気が変わったらいつでも来いよ! メーン」








あの日からどれくらい経ったのだろう。

わたしは政府が指定したAI寿命法に基づき、余命1年というところまで歳を重ねた。


棚の上に置かれた彼女のユニットは、窓から差し込む強い西日を受け少しだけ輝いて見えた。







▼The Electricer


The elect a Rikka おわり

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The Electricer 長万部 三郎太 @Myslee_Noface

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