16章:彼女のことをレディと
わたしがマンションに戻るとそこにアリカの姿は無い。
彼女の部屋には、ただ1枚のメモ紙が残されていただけだ。
≪名前、思い出した。
私の名前は五色亜里香≫
漢字に疎いわたしがその文字をスキャンすると、ゴシキ・アリカと表示された。彼女の本名がここで明らかになったわけだが、アリカ自身もまた「亜」の字を含んでいたのだ。
アリカは何処へ向かったのだろうか。
手がかりは全くない。
わたしは報告書を読み返して気になっていた……というより、初対面のときから違和感を覚えていたあの男、Uともう一度会ってみることにした。
彼のアジトへ着いたわたしがどのように話を切り出そうかと悩んでいるときに、門番の1人がわたしに声をかけた。
「あれ? 今日はレディと一緒じゃなかったんですね」
レディ? アリカのことだろうか。
わたしは門番に聞き返した。
「アリカのことかい? 今日は一緒じゃないよ」
「ですよね、レディは随分と前に帰られましたもんね」
!?
アリカがここに? わたしは門番を押しのけてUのアジトへと乗り込んだ。
「やぁ、名探偵エレク。
一周回ってようやくここに辿り着いたね、おめでとうございます」
「それはどういう意味だ? アリカはここに来たのか? 彼女は?」
「質問はひとつずつ、それがジェントルマンの礼儀ってものだ」
……そうだ、思い出した。
この男は以前アリカと一緒に訪れたとき、彼女のことをレディと呼んだ。
あの時はスルーしたが、門番もこの男も何故か同一の呼称を用いている。
わたしは静かに椅子に座ると、初手で男の懐を掴む質問を投げた。
「ゴシキアリカについて知っていることを話せ……!」
例によってUは表情ひとつ変えずにわたしを見つめた。
そして……。
「アラン・ゴシキ前大統領についての説明からしたほうがよいですか?」
「ゴシキ大統領なら誰でも知っている。戦争の英雄で、我々AIの寿命を定めた法律の立案者でもあり、アンドロイドの永遠の敵だ!」
「半分正解とだけ言わせてください。ちなみに漢字では彼の名はこう書きますよ」
そういうと、Uはペンを手にノートにさらさらとこうしたためた。
≪五色亜蘭大統領≫
またか、またしてもこの『亜の字』がわたしの前に立ちはだかるのか。
それに五色、ゴシキ? アリカの名前と一致する。それはつまり……。
「五色亜里香嬢は、その大統領のひとり娘でございます。
だからレディとお呼びしています」
つづく
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