14章:異質なアンドロイド
「シャロン、エレクだ。入るよ」
わたしはいつもの作法を破り、ドアが開くのを待たずに事務所へと入り込んだ。
これは意識的なことではなかったが、それだけ苛立っていたことでもある。
「エレク、その子は……?」
「わたしの助手で、保護しているアンドロイドでもある」
「あら、そう……。そうなのね、分かったわ。
私はシャロン・プルトン。お嬢さん、貴方の名前は?」
「アリカ」
一瞬、シャロンの表情が曇ったように見えた。
しかし、それは気のせいだったのかもしれない。
「まずは報告書を読んで欲しい。話はそれからだ」
いつもはシャロンに主導権を握られているが、この日は違った。徹底的にわたしが仕切ってやろうとさえ思えていたのだ。彼女は5人分のファイルに目を通すと、驚くべき反応をしてみせた。
「……つまり、貴方の調査によると5人全員にそれ相応の容疑がかけられていると」
「!?
どこをどう読んだらそういう結論になるんだ?」
「エレク、貴方今日はおかしいわよ。何があったの?」
おかしいのはお前だ、と椅子から立ち上がろうとするわたしをアリカが制した。
「報告は終わりでしょ?
私はシャロンさんとお話があるから、エレクは先に帰ってもらえるかしら」
わたしは冷静さを取り戻したかのように振舞い、事務所をあとにした。押してダメなら引いてみろ、と探偵業の恩師である人間からそう教わったことを思い出したからだ。アリカをシャロンにぶつけてみて、彼女からの反応を見るのも悪くない。
そう思ったわたしは、アリカが異質なアンドロイドだということをすっかり失念して先にマンションへ帰ることにしたのだ。
帰宅して、ようやく本当の意味で冷静さを取り戻したわたしは、アリカの動向が気になって仕方がなかった。
一見、未成年タイプの義体だが、知識がある者からすればA+世代の戦闘用アンドロイド。決して独りにしてはいけない存在なのだ。
やはり迎えに行こう。
そう思ったとき、アリカは涼しい顔で帰ってきたのだ。
「今、迎えに行こうと思ってたところだ」
前にも言ったけど、君は今の時代に在ってはならない存在なんだ。
くれぐれもそこだけは自覚してほしい」
「心配性だねぇ、エレクは……。
でも、もう1回左手を直してくれる? 気づいたらまた壊れちゃって…… ヘヘ」
「昨日直したばかりだろう。
どうしてこうも壊れやすいんだ……。ちょっとそこに座ってて!」
我々にとってこの日常的な義肢の修理も、今思えば違和感を覚えるべきだったのだ。
その晩、また別のイクイリビリウムを名乗る人物から連絡が入る。
シャロンが殺された、と。
つづく
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