12章:家族ごっこの探偵もどき

「すっご……!

 こんな高級マンションに、サツジンヨーギシャがいるの?」


慌ててアリカの口を塞ぐ。

と、同時にロビーにいる人間たちからの視線が我々に刺さる。


「頼む、そんな不用意な言葉を発しないでくれ」



アニス・メイ・ウォン。

最後の容疑者は事件現場で度々目撃されている女性だ。


このような富裕層が暮らすマンションに居ながら、イクイリビリウム派を狙うとしたら、間違いなく政治思想的な犯行だろう。


わたしは今回の仕事を消去法で進めていたが、実のところこのアニスこそ最も怪しいと思っていた人物である。



待つこと数十分。外出から戻ってきたアニスがロビーを横切ったとき、わたしは意を決し彼女に声をかけた。


「アニスさん、アンドロイド調査員のエレクと申します。

 お時間をいただけますか?」


「……呆れた」


「えっ?」


「呆れた、って言ったのよ。

 シャロンはこんなのを私の所に寄越したの?」


意外な名前に驚いたわたしを畳みかけるようにこう続けた。


を連れた家族ごっこの探偵もどき? 笑わせないでよ」


「シャロンをご存じなのですか?」


「そちらの質問に答える義務はないわ。

 それ以上喋ったら公務執行妨害で逮捕するからね」


そのときわたしの中で警告灯が表示された。



≪警察機構/特別捜査官による警告①、及び警告②≫



彼女は公的機関の人間であるというアラートであった。



わたしはそれ以上どうすることもできず、ただ茫然と立ち尽くすしかなかったのだ。

そしてアニスがエレベータに乗ると、アリカがぽつりと呟いた。


「……嫌な女」


今までのトーンとは違う、異質な声だった。



わたしはシャロンに疑いの目を向け、前回と同じように適当なレポートを作成して彼女の反応を試そうと企てるのだった。





つづく

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