11章:充電とメンテナンスの時間
ファギーとの対面を終えたわたしがモービルに乗り込んだとき、未受信のメールがあることに気がついた。
「受信時刻は……ちょうど彼に殴られていたタイミングか」
これでは気づくはずもない。
宛名はシャロン。今すぐに事務所に来い、という内容であった。
わたしはこのままモービルで直行したほうが早いと判断し、彼女のもとへ急いだ。
「シャロン、何があった?」
「ああ、エレク。
返信が遅いから貴方にも何か起きたのかもと心配していたのよ」
「貴方にも?」
「昨夜未明、イクイリビリウムの副長“節制”が右下腹部を刺されて殺されたわ……。
発見されたのは午前10時。まだニュースは止めている状況よ」
わたしは少なからず動揺を隠せなかった。彼と会ったあの晩から早朝のどこかのタイミングであっさりと殺害されてしまったというのだ。
「イクイリビリウム側の発表は止めているって、どうして」
「7人の幹部のうち、5人目も殺されましたなんて公表できると思う?
貴方の報告書、現時点でもいいからすぐにまとめて再提出して!」
「容疑者のうち、まだ接触できてないのがあと1人いる。
今日中にコンタクトを取るから、そこからレポートを出すよ」
「分かったわ。
……貴方も無茶しないようにね」
足早に事務所をあとにしたわたしは、レンタルモービルの延長を申請するとマンションへと向かった。アリカの様子も気になるが、なによりファイルは書斎に置いたままだからだ。
移動中、ずっと頭に残るものがあった。そう十字架だ。
そして毎回同じ部位を刺すという犯行手口。
そもそも、なぜ犯人はイクイリビリウムの住所を的確に知り得たのか?
答えが出ないままモービルはマンションへと到着する。
「ただいま。
アリカは……起きてるかい?」
部屋のドアを開けて様子を伺うと、今目覚めましたよと言わんばかりの鈍い動作で左手を伸ばしてきた。
「今日は色んなことがありすぎた。
さ、起きて充電とメンテナンスの時間だよ」
アリカの左腕を掴み、引き起こそうとしたその時、乾いた音と共に左手の義肢パーツが割れて取れてしまった。
「あ~! あ~、もう……また壊れた。というかエレクが壊した……」
「ごめん……。でも、古い義肢だししょうがないよ。
それにこうなることを予想して、パーツをたくさん買っていたのを忘れたかい?」
「ソウデシタネ!」
わたしは工具箱とスペアパーツの詰まった箱を準備し、彼女を椅子に座らせると左手の修理をしながらここ数日の激動を説明した。
「……ふぅん、じゃあイクイリビリウムも残りあと2人なんだね」
「夜は最後の容疑者、アニスの所へ行ってくる。
言っておくけど、君は留守番だ。どう見ても本調子じゃない」
「左腕が壊れたのはエレクのせいよ。
いざとなればモービルに戻るし、いいでしょ?」
そう言われると強く断れず、結局アニスの聴取にも彼女を同行させることとなった。
そして夜。
アニスが暮らすという富裕層の住むエリア、特権区へと向かう。
つづく
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