6章:十字架の絵
調査2日目。
わたしはアリカと共にUのアジトへと向かった。
彼女を連れて行く理由はジェフの時と同じだ。
「アリカ、昨日は気分を害したかもしれないが、今日の相手も癖が強い。
君の言う、年齢相応の対応を期待してもいいんだね?」
「私のことなら心配無用よ。なんならジェフも楽しい人だったわ」
複雑な気分だが、要は深入りしなければいいだけだ。Uのアジトに着いた我々は門番に要件を伝え、彼に取り継いでもらうように話をした。意外と、と言っては相手に失礼だが、きちんと礼節を守った対応もされ、U本人ともすんなり面会できる運びとなった。
「これはこれは!
今日はどういったご用件で参られたのですか?」
妙に丁寧すぎる態度が少し気になったが、わたしはジェフ同様に正直に話すことにした。あえて手札をオープンにすることで、相手から情報を聞き出そうという魂胆だ。
「なるほど、僕がいま噂の殺人事件の容疑者に……。でもあなたはそちらのレディ、いえ、お子さんと一緒に僕を捕まえに来たわけではないようですね?」
「はい、わたしの仕事は裏取りであって、逮捕ではありません。
もっともあなたが犯人だとも思っていませんし、話を聞きに来ただけです」
Uは顔色ひとつ変えずに丁寧に応えるが、ここでわたしは彼のある特徴に気がついた。この男には『表情システム』が搭載されていないことに。
我々アンドロイドは人間とコミュニケーションを取りやすくするために、疑似的な感情を表情として出すことができる。目じりを下げたり、口角を上げたりする絶妙な皮膚機能だ。
噂ではほぼ全身を機械化したといわれる元・人間のU。
ただ表情だけはピクリとも動かない。
丁寧すぎる物腰と相まって、相当な違和感を覚えた。
「依頼主はあなたにこれも共有したのでしょうか?」
どこから仕入れたのか、Uは事件現場の写真をわたしに見せた。血だまりに無残に横たわる人間と、壁にペンキか何かで書かれた大きな十字架の絵。
「これをどこで……? 初めて見ました。
十字架ということは、何らかの宗教絡みだとでも??」
「それを聞きたいのはこちらのほうです。
この写真データはあなたと入れ違いにやってきた刑事から見せられました。
こっそり複製したものですよ……これは内密に」
シャロンからまだ聞かされていない情報がある。
そう確信したわたしは、いったんマンションに戻りうわべだけの報告書を作って、彼女の反応を待ってみようと企むのだった。
帰途、アリカがこんなことを言った。
「そういえばジェフってアンドロイドなのに、クロスのアクセつけてたわね。
ああ見えて結構オシャレなところあるのかも?」
「十字架の……アクセサリーを、ジェフが?」
つづく
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