4章:有能な助手

「……今日の仕事はどうだった?」


話題を変えたかったのか、アリカが明るめの声のトーンでこう尋ねる。


「うーん、あまり気乗りはしてないんだけど……。

 殺人事件の裏取りを頼まれた」


イクイリビリウム派の事件は連日ニュースでも報道されており、変に隠す必要はないと判断したわたしは、知り合いのジェフが巻き込まれていることを説明しつつ、同時にそこまで深入りするつもりはない意思表示を彼女にした。


「私、提案がひとつあって。聞いてもらえるかな」


アリカの突然の話題に少し戸惑うも、濁したいであろう話題から逸れるのは良いと判断し、話の続きを聞くことにした。


「提案って、どんな?」


「エレクは私を助けてくれているし、部屋まで間借りしているからお礼がしたいの。

 具体的にいうと、仕事を手伝ってみたいな~ とか……どう?」




さすがのわたしもこの提案を処理するのには数秒を要した。しばらく固まっていると彼女はこう続ける。


「私はこれでもエレクとそう変わらない起動年数なのよ。もしかしたら年上かも?

 だから子ども扱いはしなくていいわ」


「い、いや、そういう問題じゃなく……。

 ? 年上? 今、なんて言った!?」


我々アンドロイドは人間を模しているつもりはないが、起動年数によって全身のサイズを少しずつスケールアップするという文化がある。これにより小さい義体であれば日が浅い、大きな義体であればそれ相応の年数だと外見で判断できるという仕組みだ。



「アリカ、君には聞きたいことがたくさんありすぎる。

 起動年数もそうだし、どこ出身で、あの晩何をしていたのか。

 この半月分、ずーっと貯めていた質問だらけだ!」


ようやく少女の外見に見合った笑顔を見せた彼女は大笑いしつつも、静かにこう制した。


「まず、女性の年齢についてはそんなに気安く触れてはいけません。

 それ以外もだいたいが個人情報にあたりますね……ノーコメントです」



分からない。


わたしはアリカのことがなにも分かっていなかったのだ。

そんな不思議な彼女がわたしの探偵業における“有能な助手”になろうとは。





つづく

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