2章:貴方次第

いつもの客間に通されたわたしは、シャロンが差し出した封筒をよそに単刀直入に切り出した。


「今回の仕事はどれくらい危険な案件ですか?」


彼女は眉ひとつ動かさず、静かにこう告げた。


「それは貴方次第……。


 依頼は殺人事件の調査だけど、どこまで深入りするかは任意とします。

 ある程度の報告書レベルでも“お上”は満足すると思うわ」



これまでも似たような依頼をこなしたことがあるが、正直なところ乗り気がしなかった。というのも大きな封筒から少しはみ出した書類に見知った名前があったからだ。

わたしは断る理由を探すため、中にある書類をすべて出しざっと目を通すことにした。



リストにあったのは全部で5名。

罪状はイクイリビリウム派の幹部メンバーの殺人容疑であった。


「Uはともかく、ジェフも入っているのか?」


ジェフとは10年来の交流があり、人間で例えるならわたしにとって友人にあたる人物だ。確かに彼は昔から『制御チップ』を搭載していないと噂されるアンドロイドだが、殺人容疑をかけられるようなヤツではない。


「エレク、だから貴方に頼みたいのよ」


「Uは……。人間たちにとっては都合の悪いポジションかもしれないが、彼も元はといえば人間なのだろう? なのにどうして」


ユーザー・ペンドラゴンという男は幼い頃に事故で身体のほとんどを機械化したとされる人間であり、その境遇から『アジン(亜人)』と呼ばれ迫害され続けてきた。そのような悲惨な過去があり、現在では過激な思想をもとに政治活動をしているため、法的機関からは常に監視対象となっているのだ。

通称:U。人間にとって都合の悪い事件が起こると、真っ先に彼の名が挙がる。



「繰り返しになるけど、どこまで踏み込むかは貴方の裁量よ。どう? 請ける?」


「……少なくともジェフの潔白だけは証明してみせる。

 請けるよ、この仕事」



わたしの概念に『後悔』というものがあるとすれば、その発端は間違いなくこの日なのだろう。





つづく

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