第1章:魔具を巡る旅の始まり4
「…哀れじゃのぉ」
トルティヤは、まるでゴミを見るかのような冷たい眼差しで盗賊たちを見下ろし、静かに言葉を紡いだ。
「水魔法-
トルティヤの低い声と同時に、周囲の空気が僅かに震え、無数の水滴が凝縮し、鋭い礫となって盗賊たちに向かって放たれた。
それは、まるで高圧の水流で岩を穿つような、圧倒的な破壊力を持っていた。
「ぐぁぁぁぁ!」
水礫を受けた盗賊たちは、悲鳴を上げる間もなく、全身に無数の穴が開き、次々と地面に倒れ伏した。
「な、なんだよこいつ…」
辛うじて水礫を避けることができた数人の盗賊たちは、目の前で起こった信じられない光景に、恐怖で顔面を蒼白にした。
「ほれ。もう終わりか?」
トルティヤは、残った盗賊たちに冷たい視線を向け、嘲弄の色を浮かべた。
「ひっ…ひいっ」
「どうか…命だけは…」
生き残った盗賊たちは、震える声で命乞いを始めた。
「人に刃を向けた者の末路は…知っておろう?水魔法-
トルティヤは、彼らの懇願を無視し、再び指先から水礫を放った。
「がっ…」
「あっ…」
そんなサシャの目の前には、多くの盗賊の屍が築かれ、大地が赤く染まっていた。
「愚か者が…身の程をわきまえるのじゃ…」
そして、その屍の中心にトルティヤが堂々と立っていた。
「…がっ」
その時、生き残っていた盗賊が必死に這いずり逃げようとする。
「まだ生きておったか」
トルティヤは手のひらを盗賊に向けると魔法を詠唱しようとする。
「ト、トルティヤ…もういいよ。十分…!」
精神世界からサシャは、トルティヤに向かってそう叫んだ。
「ダメじゃ」
トルティヤは、サシャの言葉を一蹴すると、躊躇なく魔法を詠唱した。
「無限魔法-羅刹の炎-」
次の瞬間、瀕死の盗賊が黒い業火に包まれた。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!!」
盗賊は断末魔をあげ、もがき苦しむ。
「人の命を狙う代償は大きい…覚えておくのじゃな」
トルティヤは、冷たい口調でそう宣告する。
そして、精神世界にいるサシャに声をかける。
「…どうだ?これが、ワシの力じゃ。よかったのぉ。一騎当千の戦力が手に入って」
トルティヤは、まるで当然のことのようにそう言い残すと、意識は再びサシャへと戻った。
髪の色と瞳の色も、元の黒色に戻る。
「…」
サシャは、今しがた目の前で繰り広げられた、トルティヤの圧倒的な力に、ただただ言葉を失い、全身が粟立つような感覚に襲われていた。
「どうした?お主を賊から守ってやったぞ?感謝せぬか」
トルティヤの声が、サシャの心に直接響いてくる。
「確かに助かったよ?けど、殺すことはなかったんじゃないのか!?」
サシャは、トルティヤの冷酷なやり方に強い嫌悪感を覚え、声を荒げた。
助けられたことへの安堵よりも、その手段への強い反発心が湧き上がってきたのだ。
「やれやれ…お主は甘いのぉ」
サシャの言葉に、トルティヤは心底呆れたようなため息をついた。
「いいか?人の命を狙うってことは、自分の命をかけるってことじゃ。だから、奴らは死んで当然じゃ。それとも、あんな賊のためにお主が命を散らすのか?」
トルティヤは、真剣な眼差しをサシャに向け、諭すように言った。
その言葉には、ある種の冷徹な正しさがあった。
「ぐぅ…確かに、理屈はそうかもしれないけど」
トルティヤの言葉に、サシャは反論することができなかった。
「じゃろ?分かったら感謝するんじゃな」
「(確かにトルティヤの言うことは間違っていない。でも、あのやり方は…)」
サシャは、複雑な思いを抱えながら深く考え込んだ。
そして、重い溜息をつき、トルティヤに話しかけた。
「…わかった。ただ、一つだけ約束してくれるか?」
「ほう?ワシに命令か?ワシはいつでもお主の肉体を乗っ取ることができるのじゃぞ」
トルティヤが冷酷な視線を向けたと思ったら、立て続けに呟く。
「…と言いたいところじゃが、久々の娑婆の空気を吸って気分が良い。受け入れるかどうかは分からぬが、聞くだけ聞いてやろう」
トルティヤは腕を組み、どこか楽しげな様子でサシャに答えた。
「なら一つだけ…俺に危害を加えない者の命は、やみくもに奪わないでくれ」
トルティヤは、少しの間考え込むように沈黙し、やがて小さく頷いた。
「…ふむ。それくらいなら、よかろう」
トルティヤの意外な返答に、サシャは安堵の息を漏らした。
「じゃが、代わりにワシからも一つ言っておく…」
トルティヤは、念を押すようにサシャに言った。
「ワシはワシが交代したい時にだけ、お主の体を借りる。お主が飯を食べてようが何をしてようが、ワシが交代したいと思ったら代わるのじゃ。拒否権はない。いいな?」
トルティヤの言葉には、譲れない一線があった。
「あぁ、構わない」
サシャは、わずかに笑みを浮かべてそう答えた。
「では、交渉成立じゃ」
トルティヤは、満足そうにニヤリと笑った。
「ありがとう…じゃあ、ガイエンに向かおうか」
サシャは、どこか重い足取りで、再び街へと向かって歩き始めた。
「(ま、ワシが乗っ取ってもいいが、歩くのが面倒じゃしのぉ。最悪、魔具を集めるだけ集めたその時は…)」
トルティヤは、小さく心の中でそう呟いた。
「けどさ、なんだかんだでトルティヤって優しいだね」
サシャは、歩きながらトルティヤに話しかけた。
「か、勘違いするでない!お主との利害が一致したまでよ。それに『トルティヤ様』じゃ!!」
サシャにとって、トルティヤは依然として危険な存在ではあったが、同時に、圧倒的な力を持つ頼りになる存在にもなりつつあった。
こうして、サシャとトルティヤの奇妙な旅が、予期せぬ形で始まったのだった。
※第1章終わりです!
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なんか、最強の魔導師と融合しちゃったんだか、相手が堕天使でした!S 乙戸未史人 @otunohe_mifuto
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