第3話 カゲロウの日常
子どもたちと遊び、家に帰った後でカゲロウはそっと手を伸ばし影を食べていました。
カゲロウが影を食べると、みんなの暗い気持ちや悲しい思いが消えて、明るく元気になります。
でもその子は、自分の気持ちを知らないまま楽しくなっていたのです。
カゲロウが子どもの影を食べた翌日、その子どもはみんなと遊び始め、まるで重い荷物を下ろしたように軽やかに走っていました。
その子は、自分の悲しみがどこへ行ったのか、もう思い出せませんでした。
夜が怖くて眠れなかった子も、ぐっすり眠れるようになりました。
その影の中には、小さな小さな“光のかけら”もあることを、誰もカゲロウ自身も知りません。
影を食べると、カゲロウの胸の奥にあった寂しさは、ほんの少しだけ和らぎました。
けれどそのたびに、カゲロウの体はすこしずつ薄くなっていきました。
まるで風に溶けてしまうように、輪郭がふわりと揺らぐのです。
それは、影の奥に潜む“虚世界の重さ”が、カゲロウをそっと引き寄せていたからでした。
影はただの暗いものではなく、悲しみや痛み、言えなかった涙の記憶が沈んでいる場所。
その欠片を取り込むたび、カゲロウは光の世界にいながら、ほんの少しだけ虚世界へ近づいてしまうのでした。
それでも、影の中には小さな光のかけらもありました。
その光だけが、カゲロウを現世につなぎとめていたのです。
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