〇トガビトガタ
我ながら馬鹿だと思った。それでも私は、本気で人を呪う方法を探し始めていた。効果があるかどうかは関係なかった。警察に言えないことを、誰にもぶつけられない気持ちを、どこかに向けなければ息ができなかった。
そんな時、ネットで次のような記事を見つけた。
出自不明の儀式「トガビトガタ」
人型に「罪」と記し、対象者の体液を染み込ませることで呪いが発動する
結果はさまざまだが、対象者には致命的な不幸が訪れるという
まとめサイトの一記事だった。
書いている人間も引用元も曖昧で、信憑性はない。コメント欄には、冗談めいた言葉や、創作だと断じる書き込みが並んでいる。
それでも、私は画面から目を離せなかった。
――体液である必要がある
――血液、唾液、精液など
――対象者本人のものでなければ意味がない
理屈は書かれていなかった。
理由も、由来もない。ただ、やり方だけが淡々と列挙されている。
紙で作った人型。そこに「罪」と書き、対象者の体液を染み込ませる。
あとは、燃やすなり、埋めるなり、流すなり……やり方は一定していなかった。
私は、ふと娘の日記を思い出した。
――ちゃんと出来なかった?
――それでも、私は
最後まで書かれなかった一文が、頭の中で形を変える。
ちゃんとできなかった。
何を?
スマートフォンを置いて、私は自分の手を見た。爪にはネイルアートをほどこし、肌艶も同年代の女性と比較してもかなり良い方だと自認していた。
女としての価値を、ずっとここで測ってきた。
娘が歩いた道を、私は知った。
――娘を買い、消費し、捨てた男。
その言葉が、胸の奥で静かに定着した。
正しいかどうかは、もう重要ではなかった。必要なのは、相手の体液。それだけだった。
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