第二話 鏡を作ろう!
「ずっと思っていたんだ。鏡というのはどうして正確に映さないんだ」
少しだけ寝癖がついた博士がキッチンに来るなりボヤく。
フリフリのエプロンをつけた怪物が、コーヒーを淹れながら返す。
「前後反転しない鏡なんか不気味ですよ」
「不気味なものか! 便利に決まっている、待ってろ!」
博士は叫ぶなりコーヒーを一気に飲み干して研究室へ突撃する。
怪物は鼻歌を歌いながらカップを洗うのだった。
そして、数時間後。
「見ろ! これが完璧に正確に物事を映す『真実の鏡』だ!」
博士が掲げのは、ごく普通の鏡に少しばかりの装飾を足した、何の変哲もないものだった。
「ウガ……」
しかし映された怪物は、あまりの違和感に呻いた。
なにせ右手を上げれば鏡の自分も『右手』を上げるのだ。
「これで自分がどう見えてるか正確にわかるぞ。見ろ、私がいつもより決まってるだろう」
確かに服装もアクセサリーもバッチリ決まっている。
瞬時に順応してそんな芸当ができるのはあなただけですよ、という言葉を怪物は飲み込んだ。
「そして量産済みだ。早速ご近所に配ってくるぞ」
博士は風呂敷を抱えて出て行った。
おせっかいだなあと思いつつ、怪物は夕飯の支度を始めるのだった。
それからしばらく、博士の周りの人達は服装が歪んでいたり、距離感が下手だったり、ヘアピンの位置がおかしかったり、どこか皆ズレていた。
「人を知るものは智なり、自らを知るものは明なり」
長い衣とつけ髭をつけた怪物は、そう言ってため息をついた。
なんでも作る! シュタイン博士 Ron @Ron0811
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