因果

箱舟のような乗り物に戻り、扉が閉まった瞬間、磯田の周りに数人の男たちが現れた。

「磯田大輔。歴史の改変未遂でお前を逮捕する」


「お、お前たちは」


「タイムエージェントです」


「ま、待ってくれ。俺は正しい事をしたはずだ。この行為があって今があるのではないか」


一人の男が磯田の前に出る。その男の顔はどことなく上原に似ていた。

磯田はそれに勘づき思わず声が出た。


「お、お前は」


「私は上原の子孫です」


「なに?」


「大変申し訳ないのですが、この因果でこそタイムマシーンは完成するのです」


「どういう事だ?」と磯田の声は目を見開くとともに大きくなっていた。

そして上原似の男は淡々と話し続ける。


「上原隆博はこの数日後、たまたま通りかかった艦艇に救出されるのです」


「何!?」


「生還後、彼は世間の嘲笑の中でタイムマシーンの存在を訴え続けた。彼の証言は、最初は狂気と見なされますが、目の前で見たという確信が自分を支え続け、のちに彼の証言に注目する科学者や企業が現れ、本格的に研究が始ました。そして150年後、タイムマシーンは実現される事となったのです」


「やつは、上原は、死ななかったのか!?」


「ええ。隆博氏はその構想と礎を築いた第一人者として、ここでは神格的な存在となっています」


「俺は確かに奴の心臓を!」


上原の子孫と名乗るその男の目線は、少し下に落ちた。

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