第3話

ピーンピーンピーッ

ピーンピーンピーッ


「警報!? 加藤さん!?」


「ネットワークを掌握されている。カートをたたき起こせ! 清水と一緒に防衛よ。エイダは出られる?」


「帰る最中に簡易メンテ受けてるから大丈夫。戦闘用服はないけどそもそもが堅いからなんとかなると思う」


「よし、いけっ!」


トメさんの食堂から一気に散り散りになる面々。


私は異次元ワープであるGATEから進入してくる奴らの撃退だ。

メインはカートがいじるネットワークの修復。

これが直ればアルティメットハックで一瞬にして全滅可能。


GATEからは大量の戦争用重機械兵が押し寄せてきている。


「とりあえず数を減らすか。腕部マシンガン」


腕から高速発射される大きなうねりが大量の兵を粉みじんにする。


ただ、


普通の靴なので反動が吸収しきれない。数の多さもあってじわじわとGATEの後方に後退する。


「くっそ、魔導が一時的に切れた。凄い量撃ったからな。ただ私はこれがある」


ナノワイヤーでもって一体ずつ切断していく……んだけど、デカいこいつら相手に切断するのは時間がかかる。


「しょうがない、接近戦は嫌だけど……」


Vブレードを召喚する。接近専用に開発されたエネルギー放射物質だ。おまけにでかいエネルギーシールドも付いている。

ナノワイヤーの太さと粘着力を作り替え、ワイヤーアクションのようにぐるぐる飛びながら急所を狙っていく。非接触型マルチプルバイザーのおかげで今のところ死角はない。複眼は気持ち悪いけどね。


そらもう、相手は重機関銃やらなにやら撃ってくるんだけど、今のところ効いていない。服装の下には超強化された人工筋肉が待っている。12.7なんざ筋肉でガードする。


すると残った機体がなにかを撒き始めた。なんだ、バイザーで解析する。……うっそでしょ。シリコンオイル!? 不味い、滑る。

ここからは防衛戦が始まった。残骸を壁にしつつVブレードで急所を狙う。


「あと3体……」


なんとかなるかな、


その時であった。


3体がオーバークロック? かな? をし始めたのだ。


すぐさま場所を変えたけど見違えるほど早い。


私の動きを先読みしてくる。


三体の重武装戦争用重機械兵士に囲まれた私。


逃げ場はない。


が、やりようはある。


まだバイザーは動いている。


まだまだ。まだまだ。



ただ、相手の能力を見誤っていた。


私が一瞬反応が遅れる速度で腕を火薬射出させたのだ。


「こんなもの、ナノワイヤーで」


……切れない? ナノワイヤーが切れない。


そんな物質、私と同じ超硬魔導金属くらい――


ほんのコンマ思考が外れた瞬間。

腕と接触した瞬間に電脳防御を破られ、脳をハックされほとんど動けなくなった。


私は、首筋に猛毒のウィルスを身体が壊れそうになるほどの衝撃でたたき込まれ、気が遠くなっていった。みんな……ごめん……


私はむき出しの人工筋肉、骨格のままどこかへ連れ去られた。

首筋に入ったウィルスのせいでまともに動けない。


電脳設備も回復しない。

ウィルスかと思ったけど、首筋の物体は義体強制停止の楔かもしれない。


くそ、ナノワイヤーを出そうにも、Vブレードを出そうにも、身体が上手く反応しない。四方八方に動いてしまう。


そのまま私はどこかの工場へと運ばれた。五感だけはノイズ混じりながら動いているのだ。

身体から走るノイズが、骨格内部を走る神経を触ってかなりキツい。


「よし、ここの溶鉱炉に入れれば俺たちは・・・だ」


「でも良いのか。あの・・・だぞ。これから治安はどう・・・んだ」


「しらねーよ、ヤクザやギャングが攻勢を強めるってだけだ。俺たちの・・・には関係ねえ」


なんとか聞き取れた。

ただ、考えている暇も無く、溶鉱炉に投げ入れられた。



熱い……熱い……暑い。

私の素体は超硬魔導金属。溶鉱炉の熱くらいじゃ熔けない。

熔けなければ耐えられる。


四肢や頭部の人工筋肉、それに電脳設備などが炭になっていくのがわかる。


私は目を押さえて身体を縮め、熱から少しでも防御しようと試みる。

あと少しで、義体強制停止の楔を溶かしきることができる。

そうすれば痛神経カットだって出来る。


溶かしきった瞬間は、激烈な痛みと熱に襲われた。

なんせ素体に串刺しになっていたのだ。そこに溶鉱炉の鉄が流れ込んだのである。尋常じゃない熱さだった。


さすがに真空エネルギーコア『VEC』を使い温度を吸収する。

溶鉱炉の熱を取らないのは、鉄は溶けたら固まるし、私の表層だけ冷やし続けてもスラグがたまるだけだ。続けると身動きが取れなくなる。


十分な時間が経ったろうか。

私は素体から射出していたナノワイヤーを使い、溶鉱炉の外へとこっそり這いでる。誰も居ないようだ。

ノイズまみれだが、眼を守っていて良かった。


VECの熱量を使い素体に付いた金属汚れを燃え落とす。

もう楔はない、自分の身体は自分でコントロールできる。

さあ、歩いて帰ろう。


ギィィ、ゴィィ。


ああ、そっか。溶鉱炉で潤滑油もなくなっているんだっけ。

どうしよ、探すか、逃げるか。

ジャンプすれば遠くへは行ける。数トンの重さがこの小さな足にかかるんだけど。地面埋まらないかな。


うーんと思っていると、高速で移動する丸い物体と遭遇した。


「ごしゅじんさまぁぁぁぁぁぁ!おじょうさまぁぁぁぁぁぁぁ!」


めっちゃうるさい。


「このカート、お嬢様の位置は常に把握済みです。無力なために溶鉱炉に入れられているところは見ているだけでしたが、お会いできて何よりです」


喉がやられているので、ギギギギ、と頭を動かしてマイクが無いことを示す。


「あ、そうですね。では、よいしょっと」


私の頭に乗り、身体を変形させて居心地良く座るカート。

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