第2話



 銃弾が私に降り注ぐ。

 しかし私の防御被膜を破れる物は存在しない。


「おい、LRTには傷をつけるなよ、被害はこっちもちなんだ」


「ほー、なら死なば諸共!」


 一人が巨大な斧でLRTを傷つけようとする。

 LRT自体重武装なので傷がつくとは思えないが、危険な行為だ、対処しよう。

 ヒュンッ

 という音はしないのだが、見えない糸が巨大な斧に絡みつきバラバラにしてしまった。

 私の骨格に装着されている、ナノワイヤーだ。太さや形状は変えられるが、このようにバラバラにする細さと硬度にすることも出来る


「あと二人、どうする」


 私が攻撃に対処していた時間で、カートがアクティブハックを使用、ほとんどの人員を行動不明にしていた。


「こ、降参だ、助けてくれぇ」


「こちらエイダ。行動を完了した。後始末を頼む」


 後始末の喧噪のなか、家族とも言える人たち、JUDGEの後方部隊がやって来た。


「ああぁーん、突入怖かったですぅー」


「嘘ついても困りますよ、思い切りレールにぶち当たっているじゃありませんか! カートくんはずっぽり穴を開けているし。復旧費用どれだけかかると思っているんですか! 現場の破損はウチ持ちなんだって何度も言っていますよね!! ああ、胃薬胃薬……」


「なっかむらさーん、LRTに損傷がないのが一番の収穫でしょ? これ壊したら億よ、億」


 中村主計官は「でもでもだってレールだってかなりしますよぉ」と涙目だ。

 うーん、かっこよく登場しすぎたのは否めない。


「まあ、今度からパラシュート使いますから」


「それを整備するのにもお金かかるんですよぅ。堂々と範囲外からアクティブハックで一気にやっちゃってくださいよぉ!」


 堂々と範囲外って堂々なのかなー。

 その後、メンテの渡辺整備長という名の『パパ』がやって来て、簡易測定をしてくれた。


「さすがに内部骨格及びVECに関しては一切の異常は無いが、外装に傷をつけすぎだな」


「派手な行動は慎みますか」


 パパは私の体を一番気にかけているのだ。だからパパ。以上。


 警察とのもめ事を加藤事務次長が一喝したのち、VISEに皆を乗せて悠々と帰還するのであった。

「皆さーん、エイダが帰ってきましたよー」


 ルンルンスキップで帰還。


「まずはトメさんの半チャーラーメンでしょ」


 確信を持った声でそうつぶやく。


「先に報告書よ」


 加藤事務次長の冷酷な発言が身体に刺さる。


「そげなー。いくら究極のコア『真空エネルギーコア』のVEC持ちでも、人工筋肉などには栄養が必要なんですよぉ。半チャー欲しいなぁ」


 ここでトメさんからの無線通信。トメさんは高齢なので電脳を取り付けていないのだ。だから無線。普通は『電脳ネットワーク通信』


「もう出来上がってるんだい! 温かいウチに食べないと今後は飯抜きだよ!」

「よっしゃー! 追加で半チャーラーメン3人前よろしくお願いします!!」

「しょうがないわね、先に食べよう。 ただしアルコールは駄目だ」


 トメさんの料理は美味い。特にラーメンが美味い。町中華っぽい感じなんだけど、どれも美味しい。町中華最高。

「はい、エイダ様、おしぼりです! 冷え冷えのドリンクもありますよ」

「あらまぁ、新人オペレーターの清水ちゃん、どうもありがとうねえ。今日は電脳封鎖だったから映像無くて残念だったね」

「いえいえ、VISEの画像から見ていましたよ! 私も少しだけアクティブハック手伝ったんです!」

「ハックは危険。しっかり訓練しないとカウンター防壁に脳味噌食われるよ。もっと訓練してからね」


「そうですね、出しゃばりすぎました」


 シュンとなる彼女に、突然アクセサリーが配られる。


「おうおう、自称情報屋の遠藤さん。清水ちゃんを口説くつもりかい」


「目の前で女がシュンとしていたらなにかするのが男ってもんよ。こういうときのアクセサリー、最高だろ」


「ありがとうございます遠藤さん、私はエイダ様一筋なのでなんとも思っていませんけれども」


 ズコッとずっこける遠藤さん。


「それよりこれってどこから持ってきたんです?」


「LRTの残骸だ。傷ひとつ無く綺麗に残っていたぜ」


 ふーん、そっか。

 ずるずる、むふー、幸せ指数が跳ね上がる。っかーこれよこれ。


「義体の栄養消費効率ってどれくらいなんですかねぇ。かなり食べてますよねえエイダさん」


「おしっことうんちはしないよ?」


 その言葉で盛大にラーメンを吹き出したオペレーター清水ちゃんであった。


「あれ、バスケットボールは?」


「そこでトロピカル(当社比)な電気をもらってとろけておりますよ。」

「行動においては一切の外部電気を使わないのに電気欲しがるんだよね。不思議な子だ」


 私が撫でると麻薬にはまっているような顔をして眠りこけるのであった。かわいいやつめ。


 ――そんな家族団らんをしているときであった。

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