第3話 混線する聖歌隊、あるいは幽霊との3P
1. 賢者タイムの不在証明
アルファベータに「休み」という概念は実装されていない。
僕の豆電球は、点滅をやめない。常時
チカッ、チカッ。
薄暗い地下室で、僕のイチモツだけが赤熱して光っている。
レニはマットレスの上で、壊れたラジオみたいに震えている。
彼女の肌につけたマーキングが消えかかっている。
アルファベータの唾液には「永遠」が含まれていない。僕の所有印は、インスタント・タトゥー。数時間で消える、哀れなスタンプ。
悔しい。食い千切りたい。
でも、僕の牙は丸い。僕のペニスも丸い。殺傷能力がない。
2. 幻聴のチャンネル
ズプッ。
三度目の挿入。
彼女の中は、もうぐちゃぐちゃだ。
ホワイトノイズの冷却効果が薄れ、代わりに熱暴走が始まっている。
溶けた。南極の氷が全部溶けて、ドロドロの泥水になった。
腰を振る。
ピストン運動。単純作業。工場のライン工。
なのに、反応がおかしい。
僕が「右」に突いたのに、彼女は「左」を感じて喘ぐ。
僕が「浅く」擦ったのに、彼女は「最奥」を突かれたように反り返る。
「……あ、あ、そこ……大きい、凄く、大きい……」
は?
僕は動きを止める。
僕のモノは大きくない。梅干しの種だ。パチンコ玉だ。
誰と間違えている?
「誰だ」
僕は彼女の首を絞める。優しく。脈を測るように。
「誰を感じている? ここにいるのは僕だ。理性の執行官だぞ」
彼女はうつろな目で、僕の肩越し、虚空を見つめている。
「……黒い、犬。……壁の向こうから、長い、長い舌が……」
彼女は今、僕じゃない「幽霊」に犯されている。
3. 不可視の獣(インビジブル・ビースト)
嫉妬で脳が沸騰する。
形而境界壁の向こう側。
そこには
そのフェロモンが、空気清浄機のフィルターをすり抜けて、電波となってここまで届いているのか?
彼女は受信してしまった。
僕という有線の貧弱な接続よりも、壁の向こうからの無線の強力な間接続を。
「こっちを見ろ! 入力端子はこっちだ!」
僕は猛り狂う。
速度を上げる。毎秒5回。6回。
シュバババババ。
摩擦音だけが空しく響く。
でも、彼女は僕を見ていない。
彼女の腰が、ありえない角度で跳ね上がる。
空気中の何かを受け入れるように、大きく股を開く。
そこには何もないはずなのに、まるで巨根のアルファがそこに跨っているかのように、彼女の膣が大きく広げられている。
見えないペニス。
幽霊とのセックス。
僕はその横で、必死に腰を振る「おまけ」だ。
ただのバイブレーター。ただの舞台装置。
惨めだ。惨めすぎて、最高に興奮する。
4. 脳内ハッキング
「んぎぃいいいっ!! 入ってくる! 黒いのが、思考が、太いのがぁぁっ!!」
レニが絶叫する。
彼女の内部が、僕のモノを締め付ける。
その力は、人間のものじゃない。万力だ。
僕の豆電球が潰れそうだ。
彼女を通じて、僕の脳内にもノイズが走る。
──ウヲォォォォォォン。
遠吠え? 地響き?
いや、これは都市の排気音だ。
でも、それが「交尾の歌」に聞こえる。
「あ、あ、あああっ、イクッ!
彼女がイッた。
僕のピストンに合わせてじゃない。
幻覚の獣の一突きに合わせて、盛大に潮を吹いた。
プッシャー。
透明な液が、僕の顔にかかる。
しょっぱい。海の味。生命のスープ。
5. 上書き保存(失敗)
僕も限界だ。
この敗北感。
目の前の女は、僕に抱かれながら、見知らぬ野蛮なオスに抱かれた夢を見ている。
これ以上の屈辱があるか?
「僕だ! 僕だ! 僕なんだよぉぉぉ!!」
泣き叫びながら、果てる。
三度目の射精。
薄い、水のような精液。
それが、彼女の子宮という広大な宇宙に吸い込まれていく。
でも、意味がない。
僕のデータなんて、容量が小さすぎて、上書きできない。
彼女のハードディスクは、もう獣のウイルスで満杯だ。
6. 残響(ノイズ)
事後。
地下室の空気が重い。
レニは失神している。
でも、その顔は恍惚としている。
口元が緩み、よだれと共に「……ワン」と呟いた気がした。
僕は膝から崩れ落ちる。
僕のイチモツは、しわくちゃの梅干しに戻った。
豆電球のフィラメントが切れた。
真っ暗だ。
壁を見る。
コンクリートのシミが、巨大な狼の顔に見える。
あいつが笑っている。
『お前の女、いい声で鳴くじゃないか』
震える手で、散らばった錠剤を拾い集める。
僕も飲もう。
飲んで、この幻覚を消さなきゃ。
それとも、飲んで、僕も「そっち側」へ行くべきか?
耳鳴りが止まない。
キーン。
これは理性の悲鳴か?
それとも、僕の心の、空っぽの音か?
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