第2話 手だけの女との生活

 突如あらわれた手だけの怪異「美優紀」との生活は実に快適であった。

 美優紀はふわふわと浮かび、キッチンで料理をつくる。

 こんこんと包丁でリズミカルな音が奏でられる。

 美優紀はとても料理上手であった。

 いつもコンビニ弁当だったり、スーパーの割り引きシールのついた惣菜での食生活を送っていたものががらりと変わった。

 職場に持っていくためのお弁当も作ってくれた。

 これはかなりの節約になる。

 会社ちかくの食堂やこれまたコンビニ弁当で過ごしていたからね。

 美優紀との会話は最初はメモ帳で筆談であったが、数日後にはタブレットのメモ機能を使うようになった。

 このメモ機能を使い、美優紀は買ってきて欲しい食材や、調味料を書く。

 僕はそのメモに書かれたものをスーパーなんかで買ってくるのだ。

 そうすると美優紀は実に美味しい料理を作ってくれた。


 美優紀は料理が上手いばかりではない。

 驚くほど器用なのだ。

 掃除や洗濯をしてくれる。

 一人暮しの社畜の部屋が見違えるように綺麗になった。

 部屋が綺麗になると実に気持ちいい。

 掃除なんからやろうやろうと思っていても、なかなか出来なかったのだ。

 掃除って正直、めんどくさいからね。

 美優紀が掃除をしてくれて、実に助かった。

 僕はそんな美優紀のために高めのハンドクリームを買ってあげた。

 美優紀はメモ機能にありがとうとうつ。

 こんなにも快適な生活を送ることができるのは美優紀のおかげだ。

 ハンドクリームぐらいは安いものだ。


 あと、これはあんまり大きな声では言えないけど美優紀はマッサージも得意であった。

 お風呂に入っていると美優紀が入ってきて、髪の毛を洗ってくれた。

 これがまあヘッドスパのように気持ちいい。

 頭皮をマッサージしてくれるので、髪質も良くなってきたような気がする。

 肩や腰なんかもマッサージしてくれる。

 そして夜も相手をしてくれる。

 手だけとはいえ、女性に相手をしてもらえて僕は大満足であった。

 すっきりした僕は美優紀と手を握りしめあい、眠りについた。



「最近、田中さんかわりましたね」

 職場の同僚で後輩の清水里帆しみずりほが僕に声をかけてきた。

 たしかに美優紀が家にきてから、僕は明確に変わった。

 美優紀のおかげで、のりのきいたパリッとしたワイシャツを着ているお陰だと思う。

 それに髪の毛を洗って、散髪もしてくれる。

 髭も剃ってくれるのだ。

 また美優紀の手料理で健康状態も良くなった。

 コンビニ弁当ばかり食べていた僕は血色も良くなく、髭もよく剃り残していた。

 清潔感があるから分からないが、清潔にはなったと思う。

「あの、良かったら田中先輩こんどは飲みにいきませんか?」

 まさか後輩女子から飲みに誘われるなんて、思ってもみなかった。

 むふふっと思わず笑みがもれる。

 でもふと美優紀の出が頭をよぎる。 

 あの手で毎夜いろんなことをしてもらっているのに、他の女子にいっていいのだろうか。 

 僕は清水里帆に行けたら行くとあいまいな返事をした。

 

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