第四章 一条夢想1
残された時間はおよそ8分。制限時間までに中層圏の塵を集めて隕石、もとい小型艇を作らなければならない。箱の上で思考する。この棺桶の大きさは密着すれば二人が入りそうな大きさだ。ここに張り付けるように塵を集めよう。塵の大きさは数ナノメートルから数ミクロン、髪の毛の50分1以下と聞いている。小型艇の大きさはこの箱を覆えるくらいは必要だと思う。それにはどのくらいの量の塵が必要なのか俺の頭では計算しきらない。だから俺は俺の
「もう、見られないと思うけど、いい?」
「ああ、名残惜しいが充分に堪能した」
棺桶の蓋を閉じて肩を下にして向かい合って寝そべる恰好でメライと密着する。体温が伝わって、吐息を感じて、あふれる感情が止まらない。
「姉さん、もう居なくならないで」
「そうだな、もう居なくならない」
「約束だよ」
「ああ、約束だ」
「……姉さん、ごめん」
「気にするな、男と女がくっついていればそうなるものだ」
「デリカシーないなー」
「ジョシュアにもよく言われる」
「ジョシュアってジョッシュ君?」
「知っているのか、ジョシュアを。ジョシュアは頭が良い。トライウォーズというゲームが得意でな……ところでデリカシーとはなんだ?」
その日、夜空の一部がうごめいた。ゆっくりと何かを集めるようにうごめく空は、やがて空に渦を描き中心には深く暗い闇が覗いた。その闇から逃がれるように一筋の橙が尾を引いて消えた。束の間の閃光、それは
ある者は言った、空を歪ませる流星を見たと。しかしその話を信じる者はいなかった。夢でも見たのだと口々に罵った。この歪んだ空も夜明けには跡形もなく消える。だがそれは空を見上げた者にとっては本当の話だ。
「ロイ、ロイ!」
「姉、さん――!」
俺を呼ぶ声がする。後頭部に痛みがある。どうやら気を失っていたらしい。気を失っていたと言っても一瞬。それにしても酷い揺れだ。トエガの空気膜がほぼ無くなっているのを肌で感じる。俺の作った小型艇は大気との摩擦で燃え尽きていて、棺桶だけになっていた。
「もう数秒で地上に落ちる、脱出だ。しっかり掴まっていろ」
メライは俺を抱き寄せて棺桶の蓋を蹴破った。直後、空中に投げ出された俺達はメライの能力で重さを失う。落下は止まったが俺は胃が裏返ったかのように吐きそうになった。胃酸がこみ上げるのと涙を堪えて姉にしがみ付く。
「心配するな、落ちはしない。このままゆっくり着地する」
「帰って、きたんだな」
「ああ、助かったぞ。コラ、そんなにしたら痛いだろ――」
パサパサと布のはためく激しい音が聞こえたかと思うと、そこには金の装飾の入った白装束の男が浮かんでいた。
「麗しいですねぇ」
「トエガ、見えたか! 作戦は成功か!」
「いいえ、メライさん。肉眼での観測には至りませんでした」
「そうか、失敗か」
「いいえ、失敗ではありません。この方法では不可能であることが判りました」
「ならば別の方法を探さなくては」
「いいえ、その必要はありません。トエガ団は解体です」
「では、私はどうすればいい」
「あなたは、自由の身です。長い間ご苦労様でした」
「そうなのか、なら私はロイと居よう、約束もある」
「アンタはどうするんだ、トエガ。行くところがないならN.O.R.A.なんかどうだ?」
「ハッハッハッ! 何を言い出すかと思えば、この私をスカウト! 貴方もご両親に負けず劣らず酔狂なお方ですねぇ」
やっぱダメか。手も足も出ないくらい強かったし、知識量も半端なさそうだから、戦力の補強になると思ったけど幹部クラスともなれば交渉の余地もないか。
「残念ですが、その提案には応じられません。
俺は首から下げていたものをトエガに投げ渡した。
「これは……方位磁針、ですねぇ」
「迷子のための標だ、行く道を教えてくれる。もとはメライの物だ、俺にはもう必要ないからアンタにやる」
「フッ、頂いておきましょう。代わりと言ってはなんですが一つ頼まれて下さい――――」
遠くの方からキィーンという細長い音が聞こえる。ジェットカーゴが近づいてくる。
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