第三章 綺羅の空3
ゴシュ! っと物凄い音がしたかと思うと擦れるような音が数秒続き、フッと音が消えた。トエガに言われていた通り端末のランプを点けて時間を計る。およそ2分ほどで中層圏に到達すると言っていた。空気膜の制限時間は15分。できることなら浅くゆっくり呼吸をしろと言っていた。その間にミッションを終わらせなければならない。少しの振動と土が騒めいているのは感じるが俺自身には衝撃がない。もっとこう圧し潰されるような物凄い圧力があるものと思っていただけに拍子抜けだ。今はどの辺りなのだろうか外の様子が見えないから分からない。ここまで来て俺はようやく気が付いた。どうやって止まるんだ、これ? いや、それ以前にメライの下まで辿り着けるのか? メライを載せた箱とやらと同じ条件で打ち上げたなんてことはないはず。この土塊をメライの下に届くように計算をしていたはず。急に不安になってきた俺の耳にカタカタという微かな音が聞こえてきた。俺の胸の辺りから音がする。方位磁針だ。首元から手を入れ引っ張り出す。方位磁針を照らして水平に保つ。するとその針は傾いて上を指している。姉の居場所を示す方位磁針の針だけが頼りだ。この針が少しでも傾いた瞬間、俺はどうにかこの土塊から脱出しなければならない。越えてしまった分だけ戻るように。そろそろ2分が経過する。針はまだ上向きだ。刻一刻と時が刻まれていく。ジャスト二分、傾いた!
俺は土塊の固い岩石の層を射出して推力を得る。これはN.O.R.A.勉学プログラム中等科の内容だっただろうか、岩石エンジンと名付けておこう。針の傾きは変わらず下。柔らかい土の層を剥がして射出、まだ下向きだ。これが最後、もう推力になるものはない。一縷の望みを賭けて圧縮粘土の層を剥がし撃つ。ここからは目視ができる。そしてもう打つ手がない。見つけられなきゃ全てが終わる。
……………………居た。音のない世界。擦りガラス越しの世界の上でルックスの装束を着たメライだけがくっきり見える。両手をいっぱいに広げて、こっちを見ている。正確には俺の後ろに広がる景色。粘土の層を吹かし過ぎたせいか、少し勢いがついている、このままだと通り過ぎてしまう。頭はクリアなつもりだが焦りが回る。何か何かないか、この場を切り抜ける方法! メライまでの距離はもう3メートルとない。すれ違う。全てが台無しになる――――くっ、ダメか。
その瞬間、フワッとした浮遊感が俺を包んだ。と、止まった……? 手を伸ばせばメライの手に届く距離。トエガの空気膜が繋がる。いや、見えはしないのだがそのような感覚があった。差し出された手を俺は掴む。あの時と同じ、優しさの宿る温かな手。メライは俺を足場へと導いた。足場になっている箱は棺の形をしている。
「ロイ、なんで……」
「迎えに来た、帰ろう」
「その前にやることがある。見ろ、綺羅の空だ」
天を仰ぎ見るメライに倣って俺も顔を上げた。吸い込まれそうなほど暗い空間に無数の輝き。きらきら光るすべてが、そこにはあった。その一つ一つが星と呼ばれるものだ。言葉を失う。考えることも何もない。ただ目の前に広がる光景に俺は震えた。
「満足したか」
「嗚呼、あぁ」
「それは良かったな。さて、私はひと仕事してくる、待っていろ」
「姉さん、作戦は変更」
「なんだと、中止ということか?」
「変更だって、俺のメテオーラで塵を集めるんだ」
「そうか、ロイもメテオーラが使えるのか。私は何をすればいい」
「少し考える、待っていて」
「わかった」
活動限界は残り8分。急がなきゃいけない。
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