第3話 水ブドウ大好きシスター
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今私は、遅めの昼ご飯。
ナイフとフォークで水ブドウを楽しんでいる所です。
【水ブドウ】とは、この近辺に生息する一軒家ほどの大きさの樹木です。
ブドウと呼ばれてはいますが、房のある果実では無く、人間の頭ほどの大きさの一粒果実をつけます。
実は非常に栄養価が高く、水分が豊富で、土地を選ばず成長する生命力の高さがウリの皆のオヤツです。
とはいえ、地元の人達は子どもの頃に散々食べるので、大人になってからは嫌がる人が多いとか。
私はこの水ブドウが大好きで大好きで。
初めてこれを食べた時の感動といったらもう、2度と虫や人間を口にしようとは思いませんね。
今では3食水ブドウ、更にはオヤツに水ブドウの生活です。
生、干し、細かく刻んで飲み物のようにも捨て難い。
私の教会には、この水ブドウの立派な木が生っていて、1番の自慢なのですよ。
「ティファレトさん、いるか?」
「あら、いらっしゃいませ。お仕事の依頼ですか?ダーツさん」
「いや、今度水ブドウを使った菓子を持ってくると言っただろ?それだ。」
「あらあら、律儀にありがとうございます。」
彼はダーツさん。
以前、モツグイバチに寄生された女性を背負ってきた、そろそろ中年に差し掛かる男性で銅階級の冒険者です。
「相変わらず水ブドウばっか食べてるのか」
「好物ですので」
「俺はもう、散々ガキの頃に食ったから飽きちまった」
「勿体無いですね、こんなに美味しいのに」
いったいどこに飽きる要素があるというのでしょう。
甘さ、酸味、プルプルとした食感、これほど完成された食べ物は無いというのに。
「ほれ、水ブドウをふんだんに使った焼き菓子だ」
「まぁ....なんて素晴らしいものを」
本当に素晴らしいです。 素朴な小麦の平たい焼き菓子の上に、これでもかと刻んだ水ブドウが乗っているではありませんか!
「嬉しそう.....だな。うん、嬉しそうだ」
「もちろん嬉しいですよ?どうしたのです?」
「ティファレトさんは表情が全く変わらないからよ。たまに瞬きもしてないんじゃと思うぐらいだ」
「こんなに喜んでいるのに、失礼ですよ」
「悪い悪い」
危ない危ない、瞬きを忘れていましたか。
表情はともかく、瞬き無しは流石にバレてしまいます。
「それじゃ、俺はこれから仕事だからよ。また助けが必要な時は宜しく頼む」
「ええ、もちろんです。」
そうしてダーツさんは教会を去って行きました。
さてさて、焼き菓子を楽しむといたしましょう。
「あー!シスターがオヤツ食べてるー!」
「僕達も欲しいー!」
街の子ども達が遊びに来てしまいました。
ですが、残念でしたね。
「水ブドウが沢山のオヤツですよ?」
「......じゃあ良いや」
「水ブドウはもうウンザリ」
子ども達に食べられないのは良いのですが、なんだか納得がいかないですね。
焼き菓子はとても美味しかったですよ、ええ。
汚泥のシスター あぜもち @azemochi
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