第七話 違和感
小さな違和感
朝が、やけに重かった。
目は覚めているのに、身体が動かない。
アキは天井を見つめたまま、ゆっくり息を吐いた。
「……眠い」
昨日も早く休んだはずなのに。
カーテンの向こうで物音がして、すぐに足音が近づく。
「起きてる?」
レオだった。
「起きてるけど、動きたくない」
「珍しいな」
そう言いながら、当然のようにベッドの端に腰を下ろす。
指が髪に触れた瞬間、アキは顔をしかめた。
「……ちょっと、やめて」
「え?」
「なんか、くすぐったい」
レオは一瞬固まって、それからじっとアキを見た。
「……前は平気だった」
「前は前」
理由はわからない。
ただ、今日は触られるだけで落ち着かない。
少し遅れて、蒼が入ってきた。
「アキ様、朝食——」
言いかけて、止まる。
「顔色が良くない」
「そう?」
「ええ」
蒼は視線を外さず、静かに観察する。
「匂いは平気ですか」
「……それは」
少し考えてから、アキは首を振った。
「今は、ちょっときつい」
レオが顔をしかめる。
「昨日のキッチンでも、急に出ていったな」
蒼は何も言わない。
ただ、アキの手元に視線を落とした。
無意識に、下腹部に触れている。
(——まだ、確定じゃない)
蒼は胸の内でそう判断し、口を閉ざした。
言葉にするには、早すぎる。
一方でレオは、理由のわからない不安に苛立っていた。
「なあ、今日は外出やめとけ」
「え?」
「俺がそう言ってる」
強引な声に、アキは少し笑った。
「なにそれ」
けれど、その笑顔は長く続かなかった。
胸の奥に、説明できない違和感が残っていた。
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