第四話 昼の余韻
ソファに座ったまま、アキは身動きが取れずにいた。
理由はひとつ。
「……だから、近いって」
「昼は油断するから」
レオの腕は自然に、けれど確実にアキを囲っている。
軽い調子なのに、距離だけは容赦がない。
「油断って何……」
「蒼が少し離れてる時間」
「……」
キッチンにいた蒼が、静かにこちらを見た。
「レオ」
声は低く、落ち着いている。
「距離を戻してください」
「嫌だと言われてない」
「言わせる前に止めるのが礼儀です」
レオが一瞬だけ目を細める。
「相変わらず堅いな」
蒼は動いた。
音もなく近づき、レオの腕の上からそっと手を重ねる。
「アキ様」
名前を呼ばれただけで、アキははっと顔を上げた。
「無理はしていませんか」
「……ううん、大丈夫」
そう答えたものの、蒼はすぐには手を離さない。
「“大丈夫”は、嫌じゃないと同義ではありません」
レオが小さく笑う。
「過保護」
「必要なだけです」
二人の視線が交差する。
火花というほどではないが、空気が少し張る。
「もう」
アキが間に入るように声を出した。
「昼だよ、二人とも」
「昼でも触る」
「昼だから控える」
同時に言われて、アキは思わず吹き出した。
「ほんと、真逆」
蒼は少しだけ表情を緩める。
「ですから、バランスを取っています」
「俺が崩してるみたいじゃん」
「事実です」
レオは肩をすくめつつ、しぶしぶ腕を緩める。
完全には離さないのが、いかにもレオだった。
「なあ」
レオがアキの耳元で低く言う。
「夜は俺な」
「ちょっと……!」
蒼が即座に視線を向ける。
「先約はありません」
「じゃあ、俺でいいだろ」
「決めるのはアキ様です」
アキは二人の間で、小さく息を吸った。
「……その時の気分、かな」
レオが満足そうに笑い、
蒼は一瞬だけ悔しそうに目を伏せる。
「……承知しました」
昼の光の中で、
それぞれ違う温度の想いが、静かに絡み合っていく。
(どうしてこんなに、落ち着かないんだろ)
アキはそう思いながらも、
結局レオの肩に軽く寄りかかってしまった。
それを見て、蒼は小さくため息をつく。
「……昼、ですね」
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