第三話 昼の距離感
昼のリビング。
ソファに腰掛けたアキが、スマホを置いた瞬間だった。
「はい、捕まえた」
「わっ……!」
背後から腕を回される。
振り向く間もなく、レオに引き寄せられていた。
「ちょ、ちょっと……昼だよ?」
「昼だからいい」
耳元で低く言われ、アキは思わず肩をすくめる。
レオは遠慮という言葉を知らない。
腕は緩まないし、距離は近いまま。
「……レオ、くっつきすぎ」
「足りない」
「足りないって……」
そこへ、キッチンから蒼の声が飛ぶ。
「ほどほどにしてください。アキ様、困っているでしょう」
「困ってる?」
レオはわざとらしくアキの顔を覗き込む。
「困ってる?」
「え、えっと……」
アキが言葉を探している間に、レオの手が腰に回る。
「……ほら」
「ちょっ、レオ!」
蒼が一歩近づく。
「離れなさい」
「嫌だ」
即答だった。
「俺はこうしたい」
「だからこそ言っているんです」
蒼の声は落ち着いているが、視線は鋭い。
「アキ様は物ではありません」
「知ってる」
レオはアキを抱いたまま、肩越しに蒼を見る。
「だから独占したい」
アキは思わず顔を赤くした。
「れ、レオ……」
蒼は小さく息を吐く。
「……あなたは本当に、強引ですね」
「蒼が引きすぎなんだよ」
「節度です」
「俺は節度より体温派」
さらっと言われ、アキは完全に固まった。
「……あの、二人とも」
アキが小さく声を出すと、レオの腕が一瞬だけ緩む。
「嫌だった?」
「嫌じゃ……ないけど」
正直な言葉に、レオが満足そうに笑う。
「ほら」
「……」
蒼はそれ以上踏み込まない。
ただ、少し離れた場所からアキを見る。
「必要なら、呼んでください」
その距離感が、逆に胸にくる。
「……蒼」
名前を呼ぶと、蒼は微かに目を細めた。
「私はここにいます」
レオはアキの肩に顎を乗せる。
「じゃあ俺はここ」
「競わないでよ……」
アキはそう言いながら、結局どちらも拒めなかった。
昼の静けさの中、
近すぎる体温と、少し離れた安心感が同時に存在していた。
(ほんと、正反対なんだから)
そう思いながら、アキは小さく微笑んだ。
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