第27話 笠原信明という男③
ポツポツと降る雨の中、
傘を忘れたSは
部活動を終えて家路を急いでいた。
家の近くの街灯のない路地は
いつにも増して暗かった。
その時。
見慣れない灰色のワンボックスカーが
路肩にとまっているのが見えた。
ほんの一瞬。
Sは不審に思ったものの、
それほど深くは考えなかった。
Sがワンボックスカーの横を
通りすぎようとしたまさにその瞬間、
後部座席のドアが開いて、
Sは車中に引き込まれた。
一瞬の出来事だった。
「大人しくしてろ。
さもないと殺すぞ」
ドスの利いた声と共に
ひんやりとしたナイフの刃が
Sの首筋に触れた。
Sは恐怖のあまり
声をあげることができなかった。
「ノブアキさん。
いつもの場所でいいっすね?」
運転席の男がそう言って
アクセルを踏んだ。
しばらく走ってから車はとまった。
そこは今は使われていない
古い倉庫のようだった。
Sは男達に挟まれて中へ連れ込まれた。
剥き出しの地面に
薄汚れたマットレスが置かれていた。
そのマットレスの上にSは押し倒された。
ノブアキと呼ばれた男が
ナイフを手にしたまま
Sの上に馬乗りになった。
Sは男の顔を正面から見た。
見知らぬ男だった。
男はSがこれまでに会った男達の中で
誰よりも整った顔立ちをしていた。
男の口元は笑っていたが
その目は笑っていなかった。
そんなアンバランスな男の表情に
Sは背筋がゾッとするような恐怖を覚えた。
ふいにもう1人の男によって
Sは両手をマットレスの上に
押さえつけられた。
「叫ぶのは構わんが、
誰も助けには来ないぜ」
そう言って
ノブアキと呼ばれた男は
ゆっくりとナイフを
Sの体の正中線に沿って走らせた。
制服が左右に裂かれて
薄いピンクの下着が顔を覗かせた。
続いてナイフの切っ先が谷間をなぞると、
下着が切れて形の良いバストが
露わになった。
「ほう。
これはいい物を持ってるじゃねえか」
男の手がSの右の乳房を掴んだ。
「いやああああ」
咄嗟にSは叫んだ。
次の瞬間。
男の手がSの左頬を叩いた。
「あっ!」
続けて男の舌が
剥き出しになった乳房の上を這った。
「助けてー!」
Sは勇気を振り絞ってもう一度叫んだ。
男の手が今度はSの右頬を叩いた。
「ああっ!」
「叫んでも誰も来ないんだよ!」
Sの両手を押さえていた運転手の男が
声を荒げた。
「ノブアキさん!
早いとこヤッちゃいましょう」
「はっは。
そう焦るな。
時間はたっぷりある」
そう言い終わるや否や
ノブアキと呼ばれた男が
Sのスカートを剥ぎ取った。
「やめてー!」
Sは声の限りに叫んだが、
それは男をさらに興奮させただけだった。
続いて下着が下ろされたかと思うと
抵抗する暇もなく男が中へ侵入してきた。
あまりの痛みにSは叫び声をあげた。
「はっはっは。
どうやら男は初めてのようだな。
心配するな。
誰もが通る道だ。
そのうち快感になる」
そう言って男は激しく腰を動かした。
Sは目を瞑って下腹部を襲う激痛に耐えた。
パラパラと建物に当たる雨音と
男の荒い息遣いだけが聞こえていた。
「膝を付いて四つん這いになれ」
ひとしきり動いた後で、
男は体を離し、
そう命じた。
「も、もう・・やめて・・ください」
男のナイフがふたたびSに突きつけられた。
「後ろから犯されるのがいいか。
それとも。
一生残る傷を体に刻まれるのがいいか。
好きな方を選びな」
「へへへ。
ノブアキさんは冗談が嫌いなんだ。
言うことを聞いた方が身のためだぜ」
Sは力なくマットレスに手をついて
膝立ちになった。
男の手がSの尻を掴んだ。
すぐに男が中に入ってきた。
「はぁはぁはぁ。
やっぱり後ろから犯すのが最高だな。
動物の本能ってヤツかな」
後ろから激しく突かれる度に
Sは前に倒れそうになった。
その度に髪を掴まれて引き戻された。
後ろから突かれながら、
Sは正面に目を向けた。
向こうの壁に窓がいくつか見えたが、
その窓のガラスはすべて割れていた。
見上げると高い天井が見えた。
が、所々に穴が開いていた。
肌を濡らす雨の理由がわかった。
ふいに
Sの前に運転手の男が膝立ちになった。
男は下半身に何も身に付けていなかった。
「ソレを口で咥えてやれ」
背後から男の声がした。
その声で
Sは目の前に迫る醜い棒に気付いた。
同時に。
生臭い獣臭にSは思わず顔を背けた。
すぐに。
背後から男の両手がSの首に絡みついた。
「咥えろって言ってるんだ。
このまま絞め殺されたいか?」
その手に力が入った。
「あっ・・あ・・っ・・」
声が出なかった。
殺される。
Sは直感的にそう思った。
言われるがままSはソレを咥えた。
酷い臭いと口の中に広がる不快な感触で
Sは吐きそうになった。
後ろと前から同時に責められながら
Sは建物を叩く雨音に
その意識のすべてを集中させた。
男達の動きが早くなるに従って
建物に響く雨音も大きくなった。
それと共に風が強くなり、
割れた窓から侵入する横殴りの雨が
地面に小さな水たまりをいくつか作った。
Sの首を絞めている手に力が入り
Sは一瞬目の前が真っ白になった。
苦しさと恐怖で体が硬直した。
その瞬間。
Sの中の男が激しく膨張したかと思うと、
熱い何かが体の中に放出されるのが
わかった。
同時に口の中のモノが激しく暴れて
生温い液体が口内に広がった。
男達が離れて
Sはマットに頭から倒れ込んだ。
すぐに咳込んで口の中の不快感を
吐き出した。
そしてようやく。
Sは自分が犯されたことを
現実として理解した。
Sはゆっくりと体を起こして服を探した。
そして地面に落ちていた下着に
手を伸ばそうとした瞬間、
Sはふたたびマットにねじ伏せられた。
「へへへ。
次は俺の番だろ?」
運転手の男がそう言って
Sの上に覆い被さってきた。
Sは男の顔を見た。
若干長めの黒髪、
特徴のない平凡な顔は幼く、
Sと同年代と思われた。
すぐに運転手の男がSの中に入ってきた。
ふたたび襲ってきた痛みに
Sは悲鳴をあげた。
しかし。
その悲鳴は豪雨によって掻き消された。
朦朧とする意識の中、
どこからか声が聞こえた。
「・・カサハラです。
・・件ですが・・少し遅れる・・。
必ず・・はい・・。
申し訳ありません・・」
断片的に聞こえてきた言葉が
Sの耳に残った。
その夜。
Sは汚れたマットレスの上で
何度も男達の玩具にされた。
途中、
男のどちらかがSの肛門を襲った。
激しい痛みにSは気を失いかけた。
犯されながらSは建物を叩く雨音に
意識のすべてを集中させた。
男達に蹂躙されながら
Sは現実と悪夢の中を何度も彷徨い続けた。
朝日が昇ると雨も止んだ。
そして悪魔達は去っていった。
Sは1人残された。
後日。
Sの自宅に封筒が送られてきた。
差出人は不明。
中には悪夢の夜の画像が入っていた。
Sの中の何かが音を立てて崩れた。
江藤がSからこの話を聞いた2か月後。
Sは自ら命を絶った。
その日は激しい雨が降っていた。
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