第25話 笠原信明という男①
それは江藤が高校1年生の頃の話だった。
当時。
江藤は稲置市にある
『私立傾城学園』に通っていた。
その名前を聞いて私は驚いた。
『私立傾城学園』は
歴史と伝統のある女子高で、
通っている生徒は
良家のお嬢様ばかりだった。
江藤のどことなく気品のある雰囲気と
凛として落ち着いた立ち居振る舞いは、
幼少期からの
家庭環境の賜物だったのかと
私は納得した。
入学してすぐ
江藤は1人の少女と仲良くなった。
仮に少女Aと呼ぶ。
高校生になって初めての夏休み。
江藤はAの父親が所有する
朝臣市にある別荘に招かれた。
2人はこの日のために新調した水着を着て、
別荘の近くにあるビーチに出掛けた。
そこで出会ったのが笠原信明だった。
笠原は大学生と言っていたが、
今考えると
それは嘘だろうと江藤は断言した。
その根拠を訊ねると
「あの男に
そんな知能はないはずですから」
と答えた。
笠原は背も高く、
ビーチでも目立った存在だった。
江藤は警戒したが、
Aは明らかにテンションが上がっていた。
笠原にとって
世間知らずの女子高生を口説くのは
朝飯前だっただろうと江藤は続けた。
今回のお泊り会に
2人を監視する大人はいない。
その日。
Aは江藤の反対を押し切って
笠原を別荘に招待した。
夕食は笠原が腕を振るった。
夜も更けてきた頃。
笠原は2人に酒を勧めた。
夏休みの別荘という
日常からかけ離れた空間で、
2人は勧められるままに酒を口にした。
思春期の子供は
ブレーキを踏むことを知らない。
それに。
たとえブレーキを踏んだところで
車はすぐに止まらない。
いつの間にか江藤は意識を失っていた。
目を覚ますと
江藤はリビングの床で倒れていた。
江藤は喉の渇きを覚えて
キッチンへ行った。
そして水道の水をコップに注いで飲んだ。
徐々に頭がすっきりとしてきた。
時計を見ると0時を回っていた。
そこで江藤は
2人の姿がないことに気付いた。
次の瞬間。
大きな物音に続いて
微かな悲鳴が聞こえた。
それは2階の方からだった。
江藤は恐る恐る階段の方へ向かった。
下から見ると階上は真っ暗だった。
江藤は明かりを点けずに階段を上った。
2階には2部屋あって、
物音は奥の部屋から聞こえていた。
時折少女の悲鳴も聞こえた。
江藤は足音を立てずに
そっとその部屋の前に立って
耳を澄ました。
「夏休みの良い思い出になるぜ」
男の声がした。
直後。
少女の叫び声がした。
恐ろしくなった江藤はすぐに引き返した。
そして。
1階のトイレに入って中から鍵をかけた。
何度か深呼吸をするうちに、
落ち着きを取り戻した。
江藤はトイレから出てリビングに戻った。
それから警察に通報してから
ふたたびトイレに入って鍵をかけた。
「そこから先の記憶は
曖昧なのですが・・」
と江藤は言った。
警察が来た時、
すでに笠原の姿はなかった。
夏休みが明けて
しばらくしてから学校に妙な噂が流れた。
「Aが男達の玩具にされている」
というモノだった。
そして。
その噂を裏付けるかのように
Aのあられもない姿の画像が
ネットに出回った。
恥ずかしそうに裸体を隠している姿。
両手両足を縛られて、
すべてをカメラの前で晒している姿。
中には複数の男達から
白く瑞々しい肌を
弄ばれている画像もあった。
9月が終わる前にAは学校を辞めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます