第2話
怪我も完治し、俺は状況を整理することにした。まず、俺は今十二歳の少年。後宮で天帝に仕える忍びの一人。第二式部隊を任せられている部隊隊長と言ったところだ。この年でここまでの地位に付けたのは今の俺の肉体の持ち主である条子が努力した結果だろう。条子の出身は花街のずっと奥にあるスラム。そこで父も母も知らず、名も持たずスラムの仲間たちと過ごしていた。しかし、ある日、天帝の第二忠妃である李愛さまが俺たちのことを気に入り、半ば強制的に後宮で働くことになった。だから厳密には輪子さま仕えていると言うよりかは、李愛さまに仕えていると言ったほうが正しい。
「隊長、身体の具合はどうですか?」
俺の部下の九白が俺の様子を確認しに来た。
「もう全快してる。回復薬を使ったからな」
俺は棚の中から一つの空瓶を取り出し九白に見せる。これは怪我を負ったときの特効薬で体の再生力を何億倍にも促進し、身体の傷が治る奇跡のような薬だ。実はこの条子、ちょっとだけ医学に精通している。と言ってもほとんど藪だ。知識は自己流、薬も独学、外科手術は手が不器用でできないときた。怪しいものでしかない。しかし、李愛さまはその出所不明の俺の知識を才能と呼んで起用してくれた。ちょっとだけ医者の気分を味わえた気がして嬉しかった。
「隊長、この前の戦闘中、急に動きが鈍くなって切られましたけど、何があったんですか?」
俺は先日の刺客と戦うとき、急にめまいと頭痛がして隙を生んでしまった。その隙を見て俺は敵に切られたのだ。痛みに鈍感なこの身体はそれでも持ち、最後まで敵と戦った。
「なんだったんだろうな。俺にもわからん」
「そうですか。じゃあ話してもいいですかね」
「ん? なんだ」
「はいこれ、李愛さまからの手紙です」
俺は手紙を受け取り開く。そこには天宮城の試練に挑むようにと書かれていた。
「九白、天宮城ってなんだ?」
「手紙を読んでください」
「あ、はい」
続きを読むと天宮城とは天帝に仕える忍びたち、宦官、医官などを始めとした後宮に勤める男性たちを育成するために建造された試練の城だという。主に受験者は忍びが多く、そこで合格した人間には天使として認められ、なにか天帝からご褒美がもらえるとのこと。
「え、なにこれ、絶対無理ゲーだろこれ」
「ムリゲーってなんですか?」
「ああ、絶対攻略不可能の試練ってこと」
「そうなんですか。ちなみに、俺も隊長について行ってこの試練を受けろと言われています」
「そうなん?」
「はい」
「他の奴らは」
「わたしとあんたの二人だけで」
……えぇ~。
「どうやったら断れるんだろう」
「隊長、諦めてください」
男二人で嫌な予感しかしない難題を攻略しないといけないとかどんな罰ゲームだよ。俺は知ってる。前の人生で天使らしき気配を感じ窓を眺めた時、こんな安心感のある神聖な存在がいるのかと思ったことがある。あれと同じ存在になれって、たぶん大抵の人間には無理なんじゃないんだろうか。
後宮の天使 藤照瀬 @fujiriu
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