第17話 題名未設定~

 川岸を散歩していたダンにとって、それは思いがけない出会いであった。


「あれ……なんだろう、これ」


 道の端で立ち止まり、澄んだ川の底に手を伸ばすダン。引き上げられた手の平には、艶のある赤い玉があった。



 〇



 水のろ過は川の周辺にあるような適当な石を使う。表面の荒いものからつるつるしたもの、大きなものから小石まで適当だ。水も川のものを使う。

 湯せんした石の山を専用のガラスケースに網を通して入れる。割と満帆にだ。

 川の水を入れて、ケース下部の排水口から流れ出たものを念のため加熱する。

 これでろ過は終了。あとは簡単だ。

 その水を屋敷に持っていって、水の表面をヒメにつついてもらう。それだけで魔障の影響を帯びた水は魔力を宿す。その際、ヒメの首のペンダントを少々ゆるめる。魔障を封じ込めているものだ。鍵の取っ手のようなものがついていて、それを左に回すだけだ。シブガキさん曰く、長時間ゆるめると大変なことになるらしい。簡単とはいえ、この工程が一番緊張する。


 あとは工房に持ち帰って凍らせるだけだ。これで従来の魔光石の3倍の要領を誇る――Rackラックの出来上がり。


「フィオナ、石ができてたよ」


 地下の冷凍室から持ってきた完成品をフィオナに渡す。それを彼女は熔鉱炉で熔解し、ハンマーでかんかん叩きながら縦長に引き伸ばしていく。伸びたら水でしめて放置だ。

 杖の形に細長くなった石を、フィオナが成形した木で覆ってJellyRodジェリーロッドの出来上がり。

 ヨハネスが包装用の箱に詰めてラッピングし、商品となる。フィオナは工業区に色んな伝手があるから、箱とか包装紙はすぐに用意できた。


「しっつれいしまーす!」


 丁度、店の裏口から包装用の箱一式を抱えた卸業者の人がやってきた。


「今日も繁盛してますねー」


「ありがとうございます。そこに置いといてください」


 伝票にサインすると「どうも」と言って彼は帰っていった。

 まだ初等部の11歳だというのに、そんなことがここ数日、年を明けてからずっと続いている。これが結構しんどい。でもまあ、幸せなことなんだろう。フィオナは幸せそうだし。

 これもダンが王子をカエルにしてくれたおかげか……とは言い難い。いつかしっぺ返しをくらいそうだ。幸いなことに、王族たちにはまだバレてないみたいだけど。


 今日は少し忙しい。


 このあと品評会がある。そこでJellyRodジェリーロッドを紹介する。

 店でお客に商品説明をしたことはあるけど、そういった会合に出席して発表するのは初めてだ。

 JellyRodジェリーロッドはすでに王都で知名度が高く、客の中には毎日どこぞの商人がスパイとして潜り込んでいる。手に入れて中身を調べようという魂胆だ。その程度には認知度が高い。質も認められている。会合に呼ばれたということは、商人だけでなく魔法使いにも認められたということだ。

 俺が行っても良かったかど、今回は王都内に伝手を持つヨハネスに行ってもらう。


 フィオナはここのところ、物の「純度」について調べている。品質を上げると、魔力を宿したとき自動的に機能性も向上するのではないかという仮説がでてきたからだ。

 ダンが店で接客、俺は梱包できた在庫を運ぶ。

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異世界の悦びを知りやがって! 酒とゾンビ/蒸留ロメロ @saketozombie210

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