第47話 心素の共鳴
「ミア、今日は試したいことがあるんだけど、付き合ってもらっていいか?」
アストさんに稽古をつけてもらうと言っても、毎日彼女と手合わせをするわけではなかった。いや正確には、俺たちはまだその段階になかった。二人で作戦や戦術を考え、あれこれ試行錯誤を繰り返していた。
今日は手合わせはしないが、アストさんを交えて戦術の構築を話し合っていた。
「何ですの?」
「
「まあ、確かにそれができれば戦術の幅は広がりますわね……。わかりましたわ、やってみましょう」
まずはミアに
集中してみるが、何も感じられない。自分から
「やっぱりダメなのか……」
「いや、いいところに目を付けたと思うよ。理論的には可能なはず。たぶんだけど、より近い
アストさんに助言をもらって、もう一度試してみるが、やはり上手くいかない。
「より近い
「それはつまり、同じようなことを考えて、同じようなことを思えば、同じような
「恐らくは……。……試してみますの?」
「そうだな」
それには、考えを共有しなければならない。
同じことを考えて、同じことを思う、か。俺とミアでそれが可能だろうか。
「俺とミアの間で共通の考えと言えば……」
「んー……お姉様のこと、です?」
「それだ!」
「クロードさんは、お姉様のこと、どう思っているんですの?」
ミアにそう聞かれ、言葉に詰まる。彼女は純粋な疑問なのだろうが、本人のいる前では少し恥ずかしい。だが、これも連携を取るためだ。俺は意を決しておずおずと口を開いた。
「戦いになれば強くて凛々しくてカッコいいし、頭もよくて、格上でも戦術を駆使して翻弄するところは憧れるし、普段からあんまり笑うことはなくても凛としているところはやっぱりカッコいいし、でも時々見せる笑った顔はすごい可愛いと思うし、ちょっと頑固だったり意地悪なところもあるけど、そんなところも含めて魅力的だと思うし、正直に言えば、アストさんほど魅力的な人ってちょっと考えられないくらい、俺の日常の中にアストさんが居てくれることが、何よりも幸せだと思ってる」
随分恥ずかしいことを言ってしまった気がする。自分でも自分の顔が熱く、赤くなっているのがわかる。それに、ちらと見たアストさんも、珍しく顔を赤くして、口を半開きにして呆けていた。
「よくわかっているじゃありませんの、クロードさん。でも、まだまだですわね。お姉様は凛々しいだけじゃなくて、女の子として素敵な一面をたくさん持っていらっしゃいますのよ。趣味でやっていらっしゃるお料理だって、いつかご結婚なさった時に美味しい手料理を振る舞いたいからだと仰っていましたわ。今ご自分が愛していらっしゃる方だけでなく、将来愛する方のためを今から思っていらっしゃるその健気さに、ミアはお姉様の将来の伴侶が羨ましくて堪りませんわ」
趣味で料理をしているのには、そんな理由があったのか。アストさんには結婚願望があるのか。いや、一人の女の子として、華々しく清楚な純白のウェディングドレスに身を包んで最愛の人と結婚するというのは、やはり憧れなのかもしれない。それはアストさんであっても変わらないのだろう。
「ちょっ、ちょっとっ! な、何なの、これは。せめて、わたしのいないところでやってよ。恥ずかしいんだけど……」
俺とミアに褒めちぎられて、恥ずかしさのあまりかこちらと視線を合わせられなくなっているアストさん。彼女が恥じらう姿など、そう拝めるものではない。
「今、俺とミアの気持ちは一つになっている気がする。ミアはどう思う?」
「ええ、ミアもそう思いますのよ。ミアたちはお姉様のことが大好きですのね」
「そうだな。俺たちはアストさんが……その……大好き、ってことだ」
「何を恥ずかしがっているんですの? その気持ちは恥ずかしいことなんですの?」
そうだ。俺がアストさんを好きなのは、なにも恋愛感情として、というわけではない。と、思う。女性としての魅力ももちろんある。だがやはり、一人の人間として、好きなのだ。その思いは恥ずべきことじゃない。恥ずかしいと思ってしまうのは、アストさんにも失礼だ。
「俺たちは、アストさんが大好きだ!」
「ええ、ミアたちは、お姉様が大好きですの!」
もうやめてよ……、とアストさんは恥ずかしさのあまりか手で顔を覆ってしまう。
「今ならできる気がする。やってみよう!」
今度は俺が
「あっ、感じますわ! これですのね!」
ミアが自分の身体を引っ張って、俺の正面に移動する。間違いない。今のは
今度は逆に、ミアが設置した
「できましたわね!」
「ああ。これでまた考えられる戦術が増えた。練り直しだな」
「ですわね。ありがとうございます、お姉様」
「いや、わたし、何もしてないけど……」
「いえ、アストさんがいたから俺たちは成功したんです。ありがとうございます」
お礼を言われて、なぜか複雑そうなアストさん。そんなに変なことを言っているだろうか。
「あの、さ。それ、あんまり大きな声でやらないでね、恥ずかしいから」
「アストさんが大好きっていうのですか?」
「そう、それ。っていうかクロ……わたしのこと、好きなの?」
「ええ。ミアに負けないくらいには、好きですよ。アストさんほど魅力的な方もいないですから」
もちろん一人の人間としてだ。女性として、というのはまだわからない。もちろん好意的に見ているのは間違いないが、もしかしたらそれは、ヘザーに対しても同じだったんじゃないか。そんなことも思ってしまうのだ。
「そ、そっか……。とにかく、それ、人前では大きな声でやらないでよ?」
「わかりました」
こうして、今日の特訓は解散となる。
俺は部屋に帰って、以前から考えていた、“
するとそこへ、アストさんからメッセージが届く。明日、かねてからお願いしていた買い物に行かないかとのことだった。
明日は休日で、ミアとアストさんとの稽古も休みということになっていた。
俺は二つ返事で快諾して、明日に備えて早めに眠りにつくことにした。
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