第28話 新星杯二回戦 VS ブルーノ
◆◇
開会式から数えて、今日で五日目。日程的には今日が折り返しとなる。
ここを勝てば三回戦。前の試合では大方の予想通り、ミアがアンリエッテを下して先に三回戦行きを決めている。この試合に勝った方が、明日に彼女と対戦することになるわけだ。
ゲート前で待機し、紹介アナウンスが流れると、ゆっくり競技場内へ入っていく。
『エントリーナンバー46、
一回戦の時より紹介アナウンスが豪華になっているのはいつものこと。あまり気にして気負い過ぎないようにしなければ。
一回戦からずっと、競技場のフィールドは整備されない。どんどん荒れていくフィールドをあえてそのままにし、その地形をも利用できるようになっているのだ。まだ二回戦とはいえ、地面の凹凸は目立つ。足元の注意を疎かにすると、掬われるかもしれない。
『エントリーナンバー48、
向かいから、ブルーノも意気軒高といった様子で入場し、早足気味に所定の位置についた。年下ということもあり小柄だが、隆々とした筋肉がその力強さを露骨に物語っている。
なんか、すごい睨まれているような気がする。彼とは初対面のはずなのだが……。
やがて、開始のブザーがなる。と、すぐにブルーノが駆け出した。フローターも使わずに、自分の足で距離を詰めようとする。
彼はレイのような
俺は退かずに、彼の間合いで戦うことを選んだ。
両手に
「どォした! 避けてばっかか、センパイ!」
かなり気合が乗っているらしい彼は、もう一段スピードが上がった。動きそのものが早いというより、動きに無駄がない。二本の腕と蹴りとを巧みに織り交ぜて、息もつかせない。
俺は一か八か、彼の拳と打ち合うように、銃口を差し出した。そしてぶつかり合うその瞬間に、トリガーを引く。
タイミングはどんぴしゃ。弾丸は拳を貫いて、一気に彼の攻撃を鈍らせることができる……はずだった。弾丸は撃ち出されず、彼の拳に構えた銃を弾き飛ばされてしまったのだ。さらにはタッチ判定ももらってしまい、まさかの相手に一歩リードされてしまう。
しかし、初めてブルーノに隙ができた。打ち合ったことで、今までの流れるような軌道から、少し無理に軌道を変えたのだろう。その隙を逃す手はない。もう片方の銃で、
この
そして限界まで吸熱した弾丸は、その熱をエネルギーとして炸裂した。本来は土木工事などで使われる技術を対人間用に威力を弱めている。死にはしないだろう。これでブルーノのタッチカウンターも一つ点灯、タッチカウンターは五分になった。
だが……そろそろ、トドメだ。
しかし、再度拳銃を向けた俺の手を、重い衝撃波が襲った。さっきも俺の拳銃を弾き飛ばしたものだ。突拳によって生じる衝撃波でエネルギー弾を押し返し、弾き飛ばしたのだ。まさかあれを食らって、まだこんな一撃が打てるのか。
狙って撃ったのかはわからないが、またもタッチ判定を受け、これでカウンターが二つ点灯した。マズいな。油断していると
拳銃を二丁とも失った俺は、腰から提げていたナイフを引き抜く。ナイフを使わされることになるとは思わなかった。実刃のあるナイフは一歩間違えれば致命傷を与えてしまうかもしれないから、試合ではあまり使いたくなかったが、そう言っていられる状況じゃない。
しかし、ナイフを手に取ったはいいものの、さっきの炸裂で倒れたままの体勢で衝撃波を放ってくるブルーノになかなか近づけない。さっきまで彼に間合いを詰められていたのに、今度は間合いを詰められずにいる。完全に相手のペースだ。
すると、突然攻撃が止んだ。不意を突いたように、
恐る恐る近づいてみれば、ブルーノは確かに気を失っていた。どうやら力尽きたらしい。なんだか味気ない勝利だが、
腰が抜けそうになるのを何とか堪えて、そこそこの歓声に押されながら、俺は競技場を後にした。
何はともあれ、これで三回戦進出だ。今回もあまり打ち合わずにかわし切る戦法でやり過ごせたため、身体に大きな傷はない。早々に医務室から出ることができた。だがその分、身体の疲労は思ったよりも大きい。
格下の一年生相手にこの分だと、明日は結構タフな試合になりそうだ。なにせ相手は二年生次席、ミア・ロスヴィータ・クラルヴァイン。あのアストさんの従妹なのだから。
彼女と戦うにあたって、俺にはまだやるべきことがある。これを試さなければ、明日の試合には臨めない。本当はすぐにでも帰って休みたいが、そういうわけにもいかなかった。
すぐにフラン先輩に連絡を取り、明日に向けて対策するための時間を作ってもらった。少し大掛かりな特訓になるため、場所は第一森林演習場にしてもらう。
「久しぶりだな。お前とのトレーニングも」
早速、トレーニングウェアに着替えたフラン先輩が来てくれた。連絡してすぐだというのに、ありがたい。
「急に申し訳ありません」
「いいさ。特に見たい試合があったわけでもない。そんなことより、弟子が次に勝つための特訓をしたいと言うのなら、それに付き合うのが師というものだろう」
実際のところ、俺がアストさんよりも彼女を特訓相手に選んだことを、多少なりとも嬉しく思っているに違いない。そう思えてしまうほど、今日の彼女はすこぶる機嫌が良いようだった。
「次の相手はミアなんですが、彼女の代名詞とも言える“
“
「そんなことができるのか?」
「俺の考えが正しければ、できると思います」
まずは下準備として
そして、フラン先輩には少しずつ
「いきますよ。何か異変を感じたら、教えてください」
「何をするつもりか知らないが、わかった。何かあれば逐一伝えよう」
俺が一気に
「……なるほど、そういうことか。考えたな」
「何かあったなら教えてくださいよ……」
すまない、と小さく咳ばらして、フラン先輩は感じたことを説明してくれた。
「お前の配置した
そう言って、フラン先輩は
なるほど、やはりこうなるのか。
「ありがとうございます、フラン先輩。これで、明日はなんとかなりそうです」
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