第38話 魔法の使い方
* * * *
「じゃあ、行ってくるわ。何かあったら連絡してね」
昨日話していた通り、皆が学校から帰ってきた後で、
「それは可淑もね。何があるかわからないんだから、今日は調査だけ。深追いしないようにするんだよ?」
「うわ、なんか瑠璃子が姉さんっぽいこと言ってる」
「いや、わたし可淑のお姉さんだからね?!」
三人を見送った後で、残された面々はそれぞれの部屋に戻った。オレは今日学校を休んでしまったので、今日の分の課題をやっておかなければならないのだ。
昨日、可淑さんから魔力摂取を受けて、その夜に強い眠気に襲われ、目を覚ましたのが実はつい先ほどの十五時だった。この魔力摂取の後遺症としての眠気は厳密には気絶に近く、頑張って起きていられる類のものではないらしいので、みんな無理に起こさなかったのだろう。
朝八時頃の段階でオレが目を覚ます気配がなかったのを見て、可淑さんが学校に連絡して、オレは今日は熱があって休むということになったそうだ。
担任の先生はオレの家庭の事情も知ってくれていたはずだが、可淑さんのことをどんな関係の人だと思ったのだろう。可淑さん自身は何と名乗ったのだろう。起きた時間がこんなに遅かったのがショックで、聞きそびれてしまった。
ちょうど課題を終えた頃。オレの部屋をノックする音が聞こえて、どうぞ、と促すと、
「何してたの? 今忙しかった?」
「ああ、いや。ちょうど課題が終わったところだよ」
「そっか。もう終わったんだ、偉いね。よしよし」
そう言って、頭を撫でてくれる。何だかままごとに付き合っているみたいな気恥しさがあるが、彼女は本心からオレを労ってくれているのだと思う。だから顔が火照るのを我慢して、オレは彼女に用件を聞いてみる。
「昨日のことで、ちょっと聞いておきたいことがあって」
昨日のこと、か。昨日は色々なことがあった。謎の科学者の手先と戦ったり、静玖さんのお父さんもその場に居合わせて一悶着あったり。結局、静玖さんのお父さんとはわかりあうことができたけれど。そのことだろうか。
「リン、昨日、魔法使ったでしょ。しかも、記憶操作。それって“
やっぱりそれか。あの後なんやかんやあって結局聞かれなかったが、たぶんあの場にいた可淑さんは聞きたかったはずだ。今日もオレが起きたすぐ後で出かけてしまったから聞けずじまいになってしまったのだろう。だが、まさか静玖さんから聞かれるとは思わなかった。
「それは、その……やったらできた、と言うか。前に可淑さんが、オレの母さんは記憶に関する能力の魔法少女だったかもしれないって言ってたでしょ? だから、もしかしたらオレも魔力さえあれば魔法が使えるかと思って。あの男たちみたいに」
「うん、それはわかる。原理的には可能なはずだし、実際に、リンはわたしの記憶を見てる。だから、魔法は発動してる。でも、自分の意思で、自分の使いたい魔法が使えたのは何で? ってこと」
“発動した”のと“発動させた”のでは、その意味が大きく異なるらしい。たしかにあの時は“発動させられた”けど、今同じようにやれと言われても、できないかもしれない。あの時は、明確なイメージを持って、発動させた。けど今は、そのイメージが湧かない。ってことはたぶん、今は発動させることができないんだと思う。
「リンさえよければ、わたしがちゃんと魔法の使い方を教えてあげようか、と思って。どう?」
「え、いいの?!」
オレの食いつきっぷりに若干引き気味に、静玖さんはうんうんと頷いた。
「“
そう言って、静玖さんは自分の胸元に手を当て、自然に浮き上がってくる何かを引き抜いて、オレに見せた。黒地に何かの紋様が記された、カードのようなものだ。
「たしか、これを取り込むと魔法少女になるんだったよね? 魔力と魔法が封じ込められているっていう」
「そう。魔法少女が変身しないと魔法を使えないのは、変身しないと“ここ”にアクセスできないから。でもリンは違う。リンは“ここ”じゃなくて、身体に魔法が刻まれてる。だから変身しなくても魔法が使えるの」
「それは、オレが魔法少女の子どもだから?」
うん、と静玖さんは頷く。静玖さんたちも魔法少女の子どもだから、魔法が身体に刻まれているんだろう。だけど、魔力の源は魔月符。そうなると、結局は魔月符にアクセスしないと魔法が使えない、ということか。
「身体に魔法が刻まれているとね、魔法がよく馴染むんだよ。自在性が高いって言って、わかる? イメージを、より繊細に魔法にすることができるの。だから可淑なんかは、かなり応用の幅が広いんだよ。わたしは応用するの、あんまり得意じゃないけど」
オレの能力だろうと言われている“創芽”の能力は、記憶に関する能力、とざっくりしたものだ。オレのイメージ次第で、記憶に関することなら何でもできる、と考えていいのだろうか。静玖さんの説明だと、そう思えるのだが。
「そういえば、皆の能力ってどんなものなの? 何となくはわかるんだけど……」
「わたしも実は、みんなの魔法のことはあんまり知らない。お互いに話すこともないし、大体こんな感じってことしか。だから、リンと同じかも」
ごめん、と肩を落とす静玖さん。
もっとお互いのことを知っているのかと思ったが、意外にもそうではないらしい。調子さんや可淑さんは、もう少し色々把握しているかもしれないし、もし聞くなら彼女たちの方がいいかもしれない。
「わたしの能力は、<
なるほど。だからオレの見た記憶の彼女は、お父さんに殴られた時、傷はつかなくても衝撃でよろめいていたのか。
「可淑の能力だったら知ってるよ? 教えてもらったから。……知りたい?」
今までちゃんと教えてくれていたのに急にそうやって隠されると、知りたくて仕方がなくなってしまう。それをわかっていてやっているのだろうか。そして恐らく、これに続く言葉はこうだ――“なら、条件がある”。
「……知りたいです」
「今夜、一緒に寝てくれるなら、いいよ。教えてあげる」
うちの二階には魔法少女が住んでる。 斎花 @Alstria_Sophiland
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