第26話 新世代
「
「わたしの能力<
調子さんはオレにもわかるように、わざわざ説明してくれた。彼女が今日使っていた“時間の檻”も、彼女の能力の一部だったわけか。
「調子から聞いたけど、凛太郎は聞いてしまったのよね? 魔法少女を研究している者たちについて」
「ええ。今日襲ってきたやつも、たぶんそうじゃないかと」
「そうね。その通りだと思うわ。凛太郎から見て、普通の
オレは奴の放出する心象虚像の“色”が他と違ったことを説明し、見分けは可能だと説明した。
今日、奴と交戦した四人は顔を見られているし、魔法少女を研究しているなら再び襲いに来る可能性は高い。そうなった時に、彼女らの方はたぶん襲われるまでそいつに気付けないのだろう。変身していなければ心象虚像の発生にも気付けないというのだから、そうなのだと思う。だとすれば、今後はよりオレが奴を早く発見できるかにかかっている。
「奴の情報が少ない以上、ある程度態勢の整った状態で交戦する必要があるわ。だから申し訳ないけど、凛太郎にはこれまで以上に心象虚像に敏感になってもらいたいの。お願いできる?」
可淑さんのお願いに、みんなも同じ意見だと言うようにこちらを見つめる。ただ
「わかりました。オレは元より協力したかったですから、正式にお願いしてもらえて嬉しいです」
「それはこちらも嬉しいわ。ありがとう。それで凛太郎、もう一つ聞きたいんだけど、魔力摂取をしたんですって?」
淡々と言う可淑さん。怒っているのだろうか。魔力摂取って、本当はあんまりやっちゃいけないことなんだろうか。最初は静玖さんも秘密にしておいてほしいと言っていた。つまりはそういうことだ。バレたらこうなることがわかっていたからだ。
「ええと……はい」
「それで、魔力摂取をしたことで、何が変わった? わたしたちが見える、いや、
別に怒っているわけではないらしい。静玖さんも、多少は自分から話したらしいことが、可淑さんの知る情報から垣間見えた。
「テレパシーみたいなことができたのと、あと今日は、静玖さんの記憶を見ました」
それを言うと、みんなはそれぞれに表情を変えた。それの意味することに心当りがある者とない者、静玖さんの方を窺う者。
「薄々そうじゃないかと思ってたんだけどね……。凛太郎、あなたはたぶん、魔法少女の血を引く者よ」
唐突な可淑さんの物言いに、訳がわからず思考がまとまらなくなる。
魔法少女の血を引くってことは、オレの母さんが魔法少女だったってことか? いや、そんなはず……ないと言い切れるだろうか。彼女たちのことだって、話してくれなければ魔法少女だなんて思わないだろう。
「相手は“
「その魔力の核っていうのは?」
これよ、と可淑さんは自分の胸に手を当てて、何か光り輝くカードのようなものを取り出した。何かのマークだか絵だかが描かれているが、何だかはわからない。
「これは“
「この“魔月符”が、一人ひとり違うんですか?
「そういうこと。理解が早くて助かるわ。魔女は魂を十二に切り分けた。そのそれぞれに、自分の持っていた異なる魔法を封じ込めたの。だから、わたしたち魔法少女はそれぞれで能力が異なるってわけね。もちろん、テレパシーみたいな共通して扱える簡単な魔法もあるけれど」
それで魔法少女は全部で十二人ってわけか。
でもその可淑さんの説明だと、彼女ら姉妹の関係は随分と不思議だ。彼女らのお母さんは彼女ら七人を産んだから、彼女らの間には血縁関係がある。でも、魔法少女は血統じゃない。となれば、彼女ら七人全員が魔法少女であるのはどういう理屈なんだ? 七人全員が、生まれてから“魔月符”を取り込んだってことか?
「今のかすみんの説明を聞いて、わたしたちのことを不思議に思ったでしょ?」
絢乃さんがソファの上から笑いかけてくる。彼女には何でもお見通しらしい。そもそもそこに気付かないようでは、この話にはついていけないのだろう。
「当たりだよ。今のかすみんの説明は、あくまで一般的な魔法少女の生まれ方で、わたしたちはそれとは違う。だから、“新世代”なんて呼ばれてるんじゃないかな」
「わたくしたち姉妹は、魔法少女であるお母様から、魔法少女として産まれたんですの。滅多にあることじゃありませんのよ。何せ魔法少女は、変身していなくても普通の人間とは違いますから」
可淑さんの説明では、親が魔法少女でも子は魔法少女にならない。その理由は、魔法少女の力の源は“魔月符”だからだと言う。なら、産まれた子が魔法少女になる条件は何だ?
少し考えて、一つの可能性に思い至った。
「お腹の子に“魔月符”を取り込ませれば、産まれた時にはもう魔法少女ってことですか?」
「よくわかりましたわね。でもそれだと二つ、その説を否定する材料があるんですの」
「そっか、じゃあ、違うのか……」
「いいや、結論から言えば違わないんだけどね。一つは、魔法少女は妊娠しないってこと。あ、厳密には不可能ではないんだっけ? もう一つは、魔法少女は魔法少女でいる間、歳を取らないんだ」
でも実際には、彼女たちはちゃんと成長している。姉妹らしく、年齢差もあって、顔だちも体格もバラバラ。
「わたくしたちがちゃんと歳を取っているのは、突然変異みたいなもので、説明できるような理由はまだわたくしたちにもわからないんですの。魔法少女から魔法少女が産まれるなんて、ほとんど前例がありませんから」
「魔法少女が妊娠しないっていうのは、どうしてなんですか?」
「あー、それ聞いちゃう? 妊娠するってことは、つまりアレじゃん? その……ね、乙女の口から言わせないでよ、そういうの。頼んだ、ルリ姉!」
絢乃さんが珍しく、顔を赤くして狼狽えている。もしかして彼女、意外にも下ネタに耐性がないのだろうか。 説明を放棄した絢乃さんに代わって、投げられた瑠璃子さんも、顔をほんのり赤らめながら説明はしてくれた。
「えーっと……凛太郎くんは、妊娠が起こる過程……については、知ってるってことでいいんだよね?」
「は、はい……」
改めて聞かれると、こちらも恥ずかしくなってしまう。一応、コウノトリさんが運んでくるとか、そんな風には思っていないかどうかの確認だったのだろう。さすがにオレも中学二年生の男子だ。その辺りの知識はある。
「まずね、魔法少女の肉体は再生能力と浄化能力が高いの。普通の人間にもそういう機能はあるけど、それと比べても遥かに強い作用を持ってる。肉体が損傷したら、すぐに修復しようとするとか、何か穢れが入り込んだら、すぐにそれを排しようとするとか。だからケガもすぐ治るし、病気にもならない。その力は無意識に働かせているものだから、自分で抑えたりすることは、基本的にできないんだ」
自分の意思で心臓を止めたりできない、みたいな感覚か。基本的に、というのは、実際に彼女らのお母さんはそれをやってのけたのだから、全くの不可能というわけでもないのだろう。
「それでね、その……男の人の……が体内に入ってきても、それはわたしたちの身体に元々あったものじゃないから、異物、なんだよ。だから、排除されてしまう」
「え、ち、千切られたりするんですか……?」
オレが思わず内股になると、瑠璃子さんが真っ赤になって慌てて訂正した。
「ち、あ、違くて! えっと、たぶん
……今重大なカミングアウトがあった気がするけど、あえてそこには触れないでおこう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます