第3話 桜色祭典の準備譚
四月の風が桜の花びらを纏い、教室の窓辺を掠めるとき、佐藤先生は一枚のカラーポスターを黒板に貼り付けた。薄紫の下地に金箔文字が煌めく——桜川高等学校第二十回学園祭、テーマは「春桜舞う、少年の心」。
教室は瞬く間に沸き立った。机椅子を動かす音がクラスメイトたちの談笑と混ざり合い、春の池に小石を投げ込んだようにさざめき立つ。陽葵はすぐに私の腕をつつき、瑠璃色の瞳が桜の花片を散りばめたように輝いた。「学園祭だ!白川さん、私たちのクラスは何の屋台を出すの?前の学校ではたこ焼き屋とメイドカフェを出したんだけど、すごくにぎやかだったよ!」
私はノートを教科書の下に押し込んだところだった。顔を上げると、彼女の期待に満ちた視線とぶつかった。指先は無意識に表紙のヒマワリのストラップを撫で回した。「わからないな。佐藤先生がグループに分かれて話し合わせるんじゃない?」
果不其然、佐藤先生は手を叩いてみんなを静めた。「これから二週間、クラスで学園祭の屋台を準備する。クラス全員を六人一組の六グループに分けて、まず案を討論し、金曜日までに企画書を提出してください」と話し、少し頷き加えて笑った。「今回の学園祭はベストブース賞もあるよ。図書カードが賞品だぞ」
「図書カード!」陽葵の目はさらに輝きを増し、私の袖口を引っ張って前後に揺らした。「白川さん、一緒のグループになろう!勝ったら図書カードでたくさん本を買おう!」
私が答える暇もなく、後ろの席の山田君がちょっと寄ってきた。「星野さん、俺たちのグループに来ないか?お化け屋敷を作る予定だから、絶対人気が出るぞ!」
「いやいや!」陽葵は頭をフラフラと振り、まるで振り子のようだ。「白川さんと一緒のグループになる!もっと面白い屋台を作るんだ!」
山田君は肩をすくめて、他のクラスメイトを誘いに行った。私は陽葵のしっかりとした様子を見て、心の中にほんのりと温かさが湧き上がり、そっと頷いた。「うん、一緒にしよう」
佐藤先生はすぐにグループ分けを決めてくれた。私と陽葵は第五グループに分かれ、メンバーには無口な美術委員の森山絵里、製菓が大好きな鈴木悠真、写真が趣味の田中健太、そして内気な性格の三人の女生徒もいた。放課後、みんなは教室の後ろの机を囲んで、小さな話し合いの輪を作った。
「まず何の屋台にするか考えよう」と鈴木悠真が眼鏡を押し上げ、先に口を開いた。「ケーキとクッキーが作れるから、スイーツ屋はどう?」
「スイーツ屋は他のクラスもたくさん出すだろう。新しさがないよ」田中健太はカメラを持ってちょっと振り回した。「それなら写真屋はどう?来てくれた人に桜をテーマに写真を撮って、その場でプリントアウトするんだ」
森山絵里はスケッチブックを抱え、小声で言った。「イラストを描けるから、写真屋に合わせて手描きの葉書を作れるよ」
三人の女生徒はお互いに顔を見合わせ、最後にぎこちなく言った。「私たちは特技がないから、手伝い程度しかできないけど……」
陽葵は頬杖をついて目をクルリと回し、突然机をポンと叩いた。「アイデアがあった!『桜語和歌茶屋』にしよう!白川さんの古典文学を活かして、スイーツとイラストも組み合わせれば、絶対に独創的な屋台になる!」
「桜語和歌茶屋?」みんなは少し呆然として、一斉に私の方を見た。
私はみんなの視線を浴びて少し緊張し、指先でノートの隅を摘んだ。「そう……桜茶と和菓子を用意して、屋台に古典的な和歌を貼っておく。お客さんが和歌をリクエストしたら、私が読み上げるか、葉書に書いてプレゼントするんだ」
「このアイデア、最高だ!」鈴木悠真の目が輝いた。「桜の和菓子とみかん大福が作れるから、ちょうど星野さんの好きなみかん味のお菓子にも合うね」
「俺が和歌をテーマに写真を撮って、森山さんがイラストを描けば、写真とイラストを葉書に印刷できる。お客さんが和歌をリクエストしたら、オリジナルの葉書を渡せるよ」田中健太はすぐに賛成した。
森山絵里も頷き、スケッチブックにはもう小さな桜の花が描かれていた。「桜や和歌に関するイラストを描いて、屋台の装飾も担当する」
三人の女生徒も安心したように口を開いた。「私たちはお茶を入れたり、葉書を渡したり、屋台の布置を手伝ったりできる!」
陽葵は得意げに顎を上げ、私に目をかすめた。「ほらね白川さん、あなたの和歌ってすごく役立つでしょ!」
私はみんなの目に宿る期待を見て、心の中の不安が少しずつ消えていき、頷いた。「じゃあ役割分担を決めよう。私が和歌の整理と葉書の執筆を担当し、鈴木くんがスイーツを作り、田中くんと森山さんが写真とイラストを手がける。陽葵とあと三人の女生徒は屋台の布置と接客を担当する」
「了解!」みんなが一斉に声を揃えた。夕陽が窓から差し込み、私たちの肩に降り注ぐ。桜の花びらが教室に舞い込み、広げられた企画書の上に落ちた——まるでこの準備の日々に、優しい印を押したようだ。
その後の一週間、私たちは気を張って準備に取り掛かった。毎日放課後、教室は準備の場に変わる。鈴木悠真がオーブンと食材を持ってきて、教室の後ろで桜のクッキーとみかん大福を焼く。甘い香りが桜の香りと混ざり合って、教室中に漂う。田中健太はカメラを持って校庭の桜の木の下で写真を撮り、森山絵里はそばに座って写真を見ながらイラストを描く。三人の女生徒はインターネットで屋台の布置のアイデアを探し、カラーペーパーとリボンを持って試行錯誤する。陽葵は時に鈴木君の手伝いをして生地をこねたり、時に森山さんに絵筆を渡したり、時に私のそばに来て和歌の整理を見守ったりする。
私は窓辺の席に座って、ノートに書かれた和歌を整理し、学園祭にふさわしい優しい句を選び、桜模様の便箋に一筆一筆写していく。陽葵は椅子を運んで私の隣に座り、頬杖をついて私の筆の動きを見つめ、指先で時々私のペン先をつついた。「白川さんの字、本当にきれいだね。まるで本の中に印刷されたような字だ」
「長年練習してきたんだ」私は頭を上げずに答え、ペン先が便箋の上を滑って小野小町の和歌を書き終えた。「『花の色は、移りにけりな、いたづらに、わが身世にふる、ながめせしまに』」
「この句、どういう意味なの?」陽葵はさらに近寄ってきて、金色の髪の毛が私の手の甲にそっと触れた。「少し切ない響きがするよ」
私はペンを置いて、文字を指差して説明した。「『花の色は移り変わりやすく、徒らに長く眺めていると、自分の一生も露のようにはかなく過ぎ去ってしまう』という意味だ。小野小町は平安時代の美人歌人で、彼女の和歌にはいつも時の流れを惜しむ気持ちが込められているんだ」
「切ないけど、本当に美しい」陽葵は頬杖をついて窓の外の桜の木を眺めた。「でも私はもっと明るい句が好きだ。例えば和泉式部の『人の心を知りたくて』とか」
私は彼女の瞳に宿る光を見て、口角がほんのりと上がった。便箋の裏面にその和歌を書き、さらに一行小さな文字を添えた。「星野陽葵、陽のようにあつらえ」
陽葵はそれを見て、すぐに便箋を奪って、大事そうに自分のみかん模様のノートに挟んだ。「これは私だけのオリジナル和歌だ!誰にも見せない!」
彼女の子供っぽい様子に私は思わず笑って、頭を下げてまた和歌の整理を始めた。心の中では、もともと切なさの込もった古典の文字も、彼女の存在のおかげで、ほんのりと温かい人間の息吹を帯びているように感じた。
水曜日の午後、私たちは初めての難題に直面した。屋台の装飾用品が足りないのだ。インターネットで注文した桜の提灯は金曜日にしか届かないのに、木曜日から屋台の布置を始めなければならない。
「どうしよ?」一人の女生徒は焦って泣きそうになった。「提灯がないと、桜の雰囲気が全然出ないよ」
鈴木悠真は生地をこねる手を止めて、眉をひそめた。「近くの文房具屋は全部聞いたけど、桜の提灯はすでに売り切れちゃった」
田中健太と森山絵里も手を止めて、心配そうな顔をした。そんな中、陽葵は突然立ち上がって、目を輝かせた。「方法があった!自分たちで提灯を作ればいいんだ!カラーペーパーと竹串を使って、桜の絵を描けば、買った提灯よりも絶対にきれいになる!」
「自分で作るの?」みんなは少し呆然とした。
「うん!」陽葵は講壇のそばに走って、カラーペーパーとハサミを手に取った。「白川さんが和歌を書けるし、森山さんがイラストを描けるし、みんなで協力したら、すぐに素敵な提灯が作れるよ!」
私は彼女の手に持たれたカラーペーパーを見て頷いた。「私が提灯に和歌を書いて、森山さんが桜の絵を描けば、みんなで折り紙をして提灯の形を作れば、きっとすぐに完成するよ」
「よし!じゃあ始めよう!」陽葵の号令で、みんなはすぐに行動を開始した。鈴木悠真が余っていた竹串を取り出し、田中健太が糊と紐を探してきた。三人の女生徒は提灯の紙身を折る担当を引き受け、森山絵里は紙の表面に桜の絵を描き、私は完成した提灯に和歌を書いていく。
陽葵はハサミを持って、不器用にカラーペーパーを切っていた。結果、紙はゆがんでぎざぎざになり、指を切る寸前だった。私は思わずペンを置いて彼女のそばに歩み寄り、手をかぶせた。「こうやって切るんだ。縁に沿ってゆっくりと……」
私の指先が彼女の手の甲に重なり、掌の温かさを感じることができた。陽葵の身体は一瞬固まったが、すぐにリラックスして、私の動きに合わせて紙を切った。「原来如此、こうやって切るんだね。私は初めて工作をするから、全然うまくいかない」
「大丈夫、ゆっくり練習したら上手くなるよ」私は柔らかく声をかけ、彼女が切り取った歪な桜の形を見て思わず笑った。「けっこう可愛い形になってるよ」
陽葵も笑って、切り取った桜の紙を提灯に貼り付けた。「完成したら、この提灯を屋台の一番目立つ場所に掲げよう!」
私たちは夜が暮れるまで忙しくしていた。教室の電気はずっとついており、桜の花びらが窓辺に積もり、まるで私たちの準備を見守ってくれているようだ。やっと二十個の桜提灯が完成した。それぞれの提灯には桜の絵と和歌が描かれており、少し歪な形だったが、そこにはみんなの真心がいっぱい込められていた。
「すごくきれいだ!」陽葵は一つの提灯を持って教室の中で揺らした。電気の光が紙を透過して、桜と和歌の影が映し出された。「買った提灯よりもずっと素敵だ!」
みんなは囲み寄って提灯を見て、達成感に満ちた表情を浮かべた。鈴木悠真は焼きたての桜クッキーを取り出してみんなに配った。「俺の腕前を試してみて。難題を解決したお祝いだ!」
私はクッキーを一口食べた。桜のさわやかな甘みがバターの香りと混ざり合って口の中に広がる。陽葵は私の隣に座って、みかん味のソーダを手渡してきた。「白川さん、お疲れ様!」
私はソーダを受け取って瓶の蓋を開け、一口飲んだ。みかんの甘みがクッキーの香りと混ざり合って、心の中がほんのりと温かくなった。教室の中の桜提灯を見て、そばで忙しくしている仲間たちを見て、突然思った——準備の過程は、結果よりもずっと貴重なものなのだ。
木曜日の放課後、私たちは学園祭の屋台エリアに向かい、「桜語和歌茶屋」の布置を始めた。屋台は校舎の横の桜の木の下にあり、場所は抜群だった。桜の花びらが直接屋台の上に舞い落ちてくるのだ。
陽葵と三人の女生徒は提灯を掛けたり、テーブルクロスを敷いたりする担当を引き受け、鈴木悠真は作ったスイーツをガラスケースに並べ、田中健太は写真の機材を設置し、森山絵里はイラストを屋台の壁に貼り付けた。私は写し終えた和歌の便箋を桜の木に貼り付けていく。
陽葵は踏み台に立って提灯を掛けていたが、足元を滑らせて転びそうになった。私は反射的に彼女の腰を支えた。陽葵は小声で叫んで、手を伸ばして私の腕を掴んだ。金色の髪の毛が私の頬にそっと触れた。「びっくりした!ありがとう、白川さん」
「気をつけて」私は彼女が立ち直るまで支えた。指先にはまだ彼女の腰の温かさが残っており、頬がほんのりと熱くなった。
陽葵は私に笑って振り返り、また提灯を掛け始めた。口にはメロディーのない歌を哼り続けていた。桜の花びらが彼女の金色の髪の毛に落ち、提灯に落ち、私の和歌の便箋に落ちた。屋台全体が桜色に包まれて、まるで古典的な和歌の世界に入り込んだようだ。
夕方までに布置はようやく完成した。ピンク色のテーブルクロスの上に桜茶と和菓子が並び、ガラスケースの中にはみかん大福と桜クッキーが静かに眠っている。桜の木には和歌の便箋が飾られ、二十個の手作りの提灯が風に揺れている。電気の光が桜と和歌を映し出し、まるで優しい夢のような光景だった。
「完璧だ!」陽葵は両腕を広げて一回転した。「明日はきっとたくさんの人が来てくれる!」
私は彼女の跳ねるような様子を見て、目の前の屋台を見て、心の中に期待がいっぱい湧き上がった。夕陽が桜の木に降り注ぎ、屋台全体を暖かい金色に染めた。私たちの影は長く伸びて重なり合い、まるで優しい絵画のように美しかった。
金曜日の学園祭、桜川高等学校は桜色の海に変わった。各クラスの屋台はそれぞれ特色あるものばかりで、お化け屋敷からの悲鳴、スイーツ屋からの甘い香り、ゲーム屋からの歓声が桜の香りと混ざり合って、校庭中に漂っていた。
私たちの「桜語和歌茶屋」は開店したばかりのに、すぐに多くのクラスメイトを引き寄せた。陽葵は屋台の前に立って、元気よく客を呼び込んだ。「いらっしゃい!桜語和歌茶屋だよ!桜茶と和菓子があるし、和歌のリクエストも受け付けて、オリジナルの葉書もプレゼントするよ!」
最初のお客さんは隣のクラスの女生徒だった。彼女は桜の木に飾られた和歌の便箋を見て、興味深そうに尋ねた。「和歌のリクエストができるんですか?優しい雰囲気の和歌がいいです」
私は頷いて尋ねた。「平安時代の和歌がいいですか、それとも現代の俳句がいいですか?」
「平安時代の和歌がいいです」女生徒は笑顔で答えた。
私はノートから一枚の桜模様の葉書を取り出し、清少納言の「春は曙」を書き込み、その意味を読み上げた。女生徒は葉書を受け取って、嬉しそうに言った。「本当に素敵な和歌です!桜茶一杯と桜の和菓子一つをお願いします」
陽葵はすぐに動き出して桜茶を入れ、和菓子をお皿に盛って渡した。さらに森山絵里が描いたイラストの葉書をプレゼントした。「これはおまけだよ!」
女生徒は何度もありがとうと言って、桜の木の下のベンチに座って葉書を見つめていた。
次々とお客さんが私たちの屋台に集まってきた。和歌をリクエストする人、スイーツを買う人、桜をテーマに写真を撮りたい人が絶えなかった。鈴木悠真は忙しくスイーツを作り、田中健太と森山絵里は写真撮影とイラストの制作に追われ、三人の女生徒はお茶を入れたり、商品を渡したりする。陽葵はまるで小鳥のように屋台の中を飛び回り、客を呼び込んだり和歌を紹介したりする。時には私の真似をして和歌を読み上げるが、発音は少し拙いものの、お客さんたちを大笑いさせていた。
私は屋台の片隅に座って和歌の葉書を書き続けていた。指先が桜模様の便箋の上を滑り、優しい文字が一つずつ生まれていく。陽葵は時々私のそばに走ってきて、みかん味のソーダを手渡してくれた。「白川さん、少し休んでみて。もうたくさん書いたよ」
私はソーダを受け取って、彼女の額に滲む汗をティッシュで拭いてあげた。「あなたも休んで。走り回りすぎだよ」
「大丈夫だ!」陽葵は手を振って、また客を呼び込みに走っていった。
昼ごろ、佐藤先生も私たちの屋台にやってきた。桜茶一杯とみかん大福一つを注文した。「君たちの屋台は本当に心が込められているね。和歌の選び方もテーマにぴったりだ」
「ありがとう先生!」陽葵は得意げに胸を張って言った。「これはみんなで考えたアイデアだよ。白川さんの和歌が本当に役立ったんだ!」
佐藤先生は私の方を見て笑った。「白川君、古典文学が好きなだけでなく、それをこんなに面白い形で活用できるなんて、すごいね」
私は少し恥ずかしく頭を下げた。手の中の万年筆にはまだインクがついていた。「みんなで協力した成果です」
午後、屋台に特別なお客さんが訪れた——図書室の管理員の高橋先生だった。彼女は桜の木に飾られた和歌の便箋を見て、笑顔で言った。「白川君、君が写した和歌は図書室の蔵書よりも種類が多いね」
「高橋先生、こんにちは」私は立ち上がって挨拶した。「これらは普段から写しておいた和歌で、学園祭にふさわしいと思って持ってきたんです」
「私は和泉式部の和歌をリクエストしたいんだ」高橋先生は優しく笑った。「星野君に教えた『人の心を知りたくて』という句だ」
私はすぐに和歌を葉書に書いて渡した。高橋先生は葉書を手に取って文字を見つめた。「字が本当にきれいだね。星野君は君のような友達がいて、本当に幸せだよ」
私は遠くで客の応対に忙しい陽葵の姿を眺めた。彼女はちょうど振り返って、私の方を見て手を振った。瑠璃色の瞳には笑顔がいっぱいに宿っていた。
私は小声で答えた。「私の方こそ、彼女に出会えて本当に幸せだ」
学園祭が終わりに近づく頃、審査員の先生たちがベストブース賞の審査にやってきた。私たちはみんな緊張して屋台の前に立ち並び、審査員の先生たちが屋台を見回し、桜の提灯を眺め、和歌の便箋を読み、スイーツを味わい、私が読み上げる和歌を聴いているのを見守った。
審査員の先生は頷いて笑った。「この屋台は古典文学と学園祭を巧妙に結びつけていて、雰囲気もとても温かい。今まで見てきた中で、一番真心が込められた屋台だ」
私たちは歓声を上げた。陽葵は興奮して私の腕を抱きしめた。金色の髪の毛が私の頬にこすれた。「勝った!白川さん、勝ったよ!図書カードがもらえる!」
私は彼女の背中を抱き返し、その喜びを分かち合った。桜の花びらが私たちの肩に降り注ぎ、提灯の上に舞い落ちた——まるで私たちの勝利を祝福してくれているようだ。
学園祭が終わった後、私たちは屋台の片付けを始めた。桜の提灯や和歌の便箋を片付け、鈴木悠真は残ったスイーツをみんなに配り、田中健太は撮った写真をプリントアウトして一人一人にプレゼントした。
陽葵は写真を手に持って桜の木の下に座り、写真の中の私と自分を指差して言った。「ほら、この写真。白川さんが笑ってるよ」
私は写真を受け取って見た。写真の中の私は屋台の前に座って万年筆を持っており、口角にほんのりと微笑みが浮かんでいた。陽葵は私の隣に立って、目元が笑いじわになるほど嬉しそうに笑っていた。桜の花びらが二人の肩に降り注ぎ、まるで春の日の優しい夢のような写真だった。
「私は以前、あまり笑わなかったんだ」私は小声で言って、写真をノートに挟んだ。
「これからは私が白川さんをたくさん笑わせるよ!」陽葵は私の肩をポンポンと叩いて、二枚の図書カードを取り出した。「これが賞品だよ。一人一枚に分ける。明日一緒に本屋に行って本を買おう!」
「うん」私は頷いて、手の中の図書カードを見つめた。心の中が桜の花でいっぱいになったように、温かく満たされていた。
夕陽が西に沈み、校庭の人々はだんだんと帰っていった。桜の花びらはまだ舞い落ちていた。私たちは桜の花びらに覆われた道を肩を並べて歩いた。陽葵は学園祭で起こった面白い話を一つ一つ話してくれた。あるクラスメイトが切ない和歌をリクエストして泣きそうになった話、鈴木君のみかん大福がすぐに完売した話、田中君が撮った写真が人気で連絡先をたくさん聞かれた話などだ。
私は彼女の話を聞きながら、時々うんと答えた。手の中のノートには写真や葉書、イラスト、そしてみんなで書いた和歌が挟まれていた。少し重たいノートだが、その重さは春の日の優しさが詰まったものだった。
川辺の桜の木の下に来ると、陽葵は足を止めて、カバンから桜の形をしたキーホルダーを取り出して私に手渡した。「これ、学園祭の雑貨屋で買ったんだ。初めて一緒にイベントを準備した記念だよ。プレゼント!」
私はキーホルダーを受け取った。桜のペンダントが太陽の光に輝いて、彼女がくれたヒマワリのストラップと一緒になると、まるで桜と陽が出会ったような光景だった。「ありがとう」私は小声で言って、ノートから一枚の和歌の便箋を取り出した。「これは君に。学園祭のために特別に書いたんだ」
陽葵は便箋を受け取って読んだ。そこにはこう書かれていた。「春桜舞う、君と逢いし。祭典は短し、温柔は長し」
彼女は文字を見て、瞳がだんだんと紅んできた。顔を上げて私を見つめた。「白川さん、本当にうまく書けるね」
「本心からの言葉だ」私は彼女の瞳を見つめて言った。「君に出会えて、みんなに出会えて、この春は本当に素敵な季節になった」
陽葵は笑って、そっと私を抱きしめた。「これからもたくさん一緒にイベントに参加しよう。桜を見に行ったり、和歌を書いたりするんだ」
私は彼女の背中を抱き返し、胸に伝わる温かさを感じた。川面に舞い落ちる桜の花びらは遠くに流れていき、夕陽が私たちの影を長く伸ばして重ね合わせた——まるで永遠に離れることのないような形だった。
家に帰って、私は机の前に座ってノートを開き、今日の出来事を記した。
「四月十五日、学園祭。星野陽葵とクラスメイトたちと共に『桜語和歌茶屋』を準備し、提灯を作り、和歌を書き、客を迎え、ベストブース賞を受賞した。桜の香りが身に纏い、みかんの香りが胸に沁みる。祭典の喧騒の中に、少年たちの最も真心のこもった温柔が隠されていた。一人で歩く道よりも、肩を並べて歩む道の方が、ずっと暖かく、ずっと明るいのだと、やっと気づいた」
書き終えて、私は桜のキーホルダーをノートに結びつけた。ノートの中の写真や便箋を眺めて、口角がほんのりと上がった。
窓の外の桜の木はまだ花びらを舞い落としている。そして私のノートの中には、また一頁、桜色の祭典に関する温かい文字が加わった。
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