第11話 金貨10,000枚のプレゼン
カイル様を味方につけ、福助という看板犬(癒やし担当)も得た健斗たち。 次なる目標は、王都の一等地で100年放置されている巨大石造建築、通称**「旧王立穀物庫」**の買収だ。
「あそこをリノベして『職住一体型の商業ビル』にする。それには……金貨10,000枚は下らない」 「健斗さん、うちの今のキャッシュじゃ金貨50枚が限界ですよ!」 リンの悲鳴に近いツッコミが飛ぶ。
「だから行くんだよ、リン。……**『冒険者ギルド・金融局』**へな」
ギルドの鉄の女
ギルドの地下にある融資窓口。そこに座っていたのは、モノクルをかけ、冷徹なオーラを放つエルフの女性、「融資の番人」ことミラだった。
「……不動産担保融資? 笑わせないでください。冒険者ギルドは、魔獣の素材や宝箱の中身には金を貸しますが、動かない『石の箱』に貸す金はありません」
ミラは健斗が提出した書類を一瞥もせず突き返した。この世界では「不動産は奪うもの」か「相続するもの」であり、融資を受けて運用するという概念が薄い。
「ミラさん。あなたは『石の箱』と言いましたが、これは**『金を産み続ける魔道具』**なんですよ」 健斗はニヤリと笑い、リンに目配せをした。
「……失礼します。こちらが、我が社の事業計画書です」 リンが、実家から持ってきたポスカで極彩色にデコレーションし、簿記2級の知識をフル動員して作成した「30年収支シミュレーション」を広げる。
「な……何ですか、この緻密な数字の羅列は。空室率、修繕積立金、管理委託費……?」 「さらにこちらを」
健斗はタクミが作成した**「VR風・立体パース(魔法投影)」**を起動した。 暗い穀物庫が、日本のサッシ技術と魔法の照明で、明るく清潔なショッピングモールに変わる映像が浮かび上がる。
福助、ミラを「融資(デレ)」させる
「……確かに、この計画通りにいけば、利益は出るかもしれません。ですが、保証がありません。あなたが逃げ出さないという保証が……」
ミラがそう言いかけた、その時だった。 健斗の足元から、**「フゴッ、ブヒヒッ……」**と、お餅のような物体が這い出してきた。
「あ……」 ミラが固まる。福助は、ミラの冷たいロングスカートに自分の顔をごしごしと擦り付け、そのまま彼女の足元でゴロンと仰向けになった。「撫でていいよ」と言わんばかりの無防備なヘソ天だ。
「……何、この……醜悪なのに……愛おしい生き物は……」 ミラの鉄の仮面が崩れた。彼女は震える手で福助のむちむちな腹を撫で始める。
「ミラさん。福助も、このビルの『共同経営犬』です。逃げも隠れもしません。もし返済が滞ったら、この子の『お散歩権』を差し上げてもいい」 「……くっ。……分かりました。その条件(お散歩権)込みで、特別枠の融資を検討しましょう」
異世界初の「レバレッジ」
「——ただし!」 ミラは福助を抱き上げたまま、鋭い目で健斗を射抜いた。 「利息は年5%。さらに、ビルの1階に『ギルド出張所』をテナント料無料で入れること。これが条件です」
健斗は心の中でガッツポーズをした。銀行との交渉は、日本でも異世界でも「相手の懐に入る」ことが肝心だ。
「成立(ディール)だ。……リン、契約書の作成を。タクミ、今すぐ穀物庫の基礎診断に入るぞ!」 「了解! 最高の『駅ビル』を作ってやるぜ!」
こうして健斗たちは、異世界で初めて**「他人の金(融資)」を使って「巨大資産」を動かす**という、禁断のレバレッジ経営に足を踏み入れた。
異世界で不動産投資をしてみた @liclove
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