リュウとミレリア-2

 フィルの家に着くと、ミレリアは一階のフィルの部屋があるあたりの、雨戸の掛かった窓を覗き込み始めた。

「居るの?」

 と言ってリュウが声を掛けると、「しっ!」と言って、ミレリアが口に人差し指をあてる。リュウもこっそりと窓から部屋を覗き込んだ。フィルと……近くに初老の老人が居る。その人が多分、客人の学者なのだろう。

 フィルは指先に、魔法で水球を作り始めた……が、すぐに壊れてしまった。どうも魔法の勉強らしい。リュウは魔法を見るのは初めてだった。ミレリアを見ると、目をキラキラさせながら、その様子を見ている。なるほど、ミレリアの目的は魔法だったのか。

 ミレリアがもっとよく見ようと乗り出す。その瞬間だった。


 ガタッ


 ミレリアが乗り出した拍子に、雨戸を支えていたつっかえ棒が外れて、覗いていたリュウとミレリアが挟まってしまった。物音に驚いて、フィルと学者が同時に窓を振り向く。

(しまった、バレた……)

 リュウとミレリアは同時に思った。

「リュウとミレリアじゃん。二人とも、何してんの?」

 フィルが、丁度良かった、という感じを滲ませつつ、二人に言った。


 ミレリアが指先に水球を作り始める。フィルとは違って直ぐに壊れずに、綺麗な球体になった。

「ミレリアさんは、筋がいいですね」

 客人の学者、名をアルデスという、がミレリアの作った水球を褒めた。

 ミレリアは誰も居ない方の壁に顔を向ける。ニヤケ顔をすると、それを隠すために誰も居ない方を見るのは、ミレリアの癖だった。


 覗いていたのがバレた時は怒られるかと思ったのだが、二人とも特に何も言われなかった。アルデスにしてみれば、やる気のなさそうなフィルに教えるよりは、興味津々で覗き込んでいる二人の方に好感を持ったのだろう。リュウとミレリアはちゃんと玄関から上がり、フィルと一緒に魔法を教えてもらうことになった。


 リュウも水球を作ってみたが、中々上手くいかない。フィルみたいに直ぐ壊れてしまう。ミレリアが得意げにリュウに言う。

「こうやって、ちょっとクルクルって回転させると、綺麗な球体になるよ」

 ミレリアのアドバイスに従って、少し回転させると、確かに先ほどよりも安定するようになった。

「やった、できた。ありがとう、ミレリア!」

 ミレリアはフフーン、という顔をすると、今度は両手の指でそれぞれ水球を作り始めた。ミレリアは器用だ。

 それをみたアルデスが言う。

「リュウ君もうまいですね。もしかして、二人とも人間族じゃない?」

 ミレリアが言う。

「私はお母さんが人魚で、リュウはお父さんがドラゴンだよ」

 それを聞いて、アルデスが一瞬だけ狼狽える。

「ドラゴン、か……」

 ドラゴン族の凶暴さは有名で、すぐキレることから、他種族からはあまりよく思われていないことが多い。とは言え子供相手に大人げないと思ったのか、アルデスはすぐに気を取り直して言う。

「人魚とドラゴンですか……どちらも魔力が高いと言われている種族ですね。お二人の筋が良いのは、それもあるかもしれませんね」

 それを聞いて、ミレリアが疑問を口にする。

「なんで人魚とドラゴンは魔力が高いの?」

 アルデスは少し笑って言う。

「いい質問ですね。どちらも寿命が長い種族というのが特徴ですね。私は生命力と魔力は、同じものなのではないか?と考えて、それを研究しているんですよ」

 リュウはアルデスが言っていることが良く分からない。アルデスが続ける。

「特に人魚は不死と言われていますからね。もしかしたらミレリアさんにも、物凄い魔力があるかもしれませんね」

 それを聞いてミレリアが目を輝かせて言う。

「つまり私には、無限のパワーがある、ってこと?」

「そうかもしれませんね」

 アルデスが笑った。


 その日からアルデスが帰るまで、リュウとミレリアは毎日フィルの家に行って、アルデスに魔法を学んだ。アルデスは最終日に一冊の本をミレリアに渡して言った。

「よかったら読んでみて下さい。私の書いた本です」

 リュウとミレリアは、書いてある字は分からなくても、夢中になってむさぼるように読んだ。

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