第7話 完全犯罪

 犯罪というものには、いくつもの考えかたというものがある。その一つが、

「交換殺人」

 というものであるが、ここのは、

「メリットとデメリット」

 が存在している。

 メリットとしては、

「動機を持っている人間には、完璧なアリバイを作ることができ、実行犯は、動機を持った人間と、殺害された人間との間に、一切の関係がないということを前提に考えた時、アリバイなどに関係なく、そもそも、捜査線上に浮かんでこないということによって、管財犯罪ならすめる」

 ということである。

 しかし、逆にデメリットとしては、

「完全犯罪ならしめるために、動機を持った人間と、被害者との間に、一切の関係を悟られてはいけない」

 ということになる。

 しかも、

「犯罪者側の人数が増える」

 ということは、その関係がバレてはいけないというしがらみから、余計な神経を使わなければいけなくなり、

「精神的に追い詰められる」

 ということになる。

 その状態を、果たしていつまで耐えることができるというのか?

 その問題が大きいわけで、それが解決できれば、

「完全犯罪」

 となる。

 その完全犯罪ならしめるために、

「人間の弱い部分をいかに強靭にするか?」

 ということを考えれば、

「一つの確信を得ることで、これさえできれば、完璧である」

 ということを証明できる、

「犯罪における公式」

 のようなものがあれば、可能であろう。

 そのうえで、

「人間の中にある、信じるという気持ちを、洗脳という形で動かすことができれば、そこに、神に近づく何かが得られ、犯罪に対しても、強靭な精神力で賄うことができる」

 という考えかただ。

 そもそも、市場博士が、

「ロボット工学の研究」

 というのを行っているのも、そのあたりに原因があった。

 最初こそ、

「犯罪を人間が行うのではなく、機械が行うものだ」

 ということにしてしまえば、実行犯としての、機械を裁く法律はないということで、そのロボットと動機を持った男の関係性が立証されなければ、

「命令を下した」

 ということにならないという意味での、完全犯罪を考えていた。

 しかし、途中から、その考えよりも、

「ロボットというものが、感情を持たずに、人間に洗脳されることで、命令通りに、厳かに犯罪を行うことができる」

 という発想に変わっていった。

 だから、話せの発想は、

「ロボットというのは、人間のような感情を持たず、あくまでも、所有者がいて、その所有者のいうことだけを聞いている」

 というものだと考えるようになった。

 そもそも、ロボットというのは、

「人間に都合のいい」

 ということが大前提に考えられている。

 そういう意味では、あくまでも、

「人口知能の発展」

 というのは、その瞬間主幹での判断力に尽きるといってもいいだろう。

 無限の可能性を瞬時に判断して、最高の判断を行うことができるというのが、ロボットなのだ。

 つまり、

「ロボットは、この一点に始まり、この一点がすべてだ」

 といってもいいだろう。

 だから、

「これが解決できないということは、最初からできないということを示している」

 ということだから、

「ロボット開発」

 というのは、

「最初からまったく進んでいない」

 といえるだろう。

 これが、

「タイムマシンの開発」

 ということに対して、すべての面で、

「タイムパラドックス」

 という一点に限っただけで、

「不可能なのだ」

 ということで、まったく先に進まないことと同じではないだろうか。

 それこそ、

「タイムマシン」

 であったり、

「ロボット開発」

 というものの中に、

「三すくみ」

 のような関係が潜んでいて、それが、

「堂々巡り」

 というものを繰り返すことによって、先に進まないといえるのではないだろうか?

 それを考えると、

「三すくみ」

 というものが、

「抑止力」

 ということで、お互いに、相手を戒めるだけの力というものを持っていることで、

「完全犯罪」

 というものを、成功なら占めると考えたのが、市場博士の考えであった。

 ただ、やはり、

「実際の犯罪に結びつけるのは難しい」

 といえるだろう。

 何といっても、

「1:1の交換殺人」

 ということでも、

「偶然が重ならないと、なかなか計画を立てるまでいかない」

 ということである。

 つまりは、

「人を殺したい」

 というだけの動機を持っている人というのは、星の数ほどいるだろう。

 へたをすれば、

「人はそれぞれに、大なり小なり、一人くらいは、殺してやりたい」

 と思っている人がいて、不思議はない。

 確かに、

「毎日のように、どこかで殺人事件が起こっている」

 ということであるが、それでも、

「誰かを殺したい」

 と思っている人が、すべてその目的を達するというわけではない。

「考えはしたが、その行動に対して度胸がない」

 と考える人、あるいは、

「いくら相手が、殺されても仕方がない」

 という人であっても、自分が人を殺すということまではできない。

 と、時間が経つにつれて、その発想がなくなっていくという人もいるだろう。

 それを、

「度胸がないから」

 と考えるのか、

「正義感や、勧善懲悪の気持ちから」

 と考えるのか、それとも、

「相手を殺せば、自分が地獄に行く」

 という、宗教的な考えなのか、はたまた、

「相手を殺せば、相手にも家族がいて、今度は自分や、自分の家族が復讐されるということになり、結局、泥沼のスパイラルに入り込んでしまう」

 という考えなのか、それぞれだといえるだろう。

 しかし、

「殺人をあきらめるとしても、これだけの発想があるのだから、実際に、復讐であったり、殺人というものが、そう簡単に行われないということが、精神的な理由では、十分にありえる」

 ということになる。

 もちろん、精神的なものとして、

「犯罪者の心理」

 というのもあるだろう。

 特に、交換殺人などにおいて。

「共犯といってもいい相手と、連絡を取ることが許されない」

 ということで、そのすべてが、

「自分の意思や考えかたによる」

 ということになる。

 自分のことだけでも大変なのに、それが、相手が考えることも含めると思えば、連絡が取れないだけに、相手が何を考えているのか分からず、

「相手も自分と同じ苦しみを味わっているはずだが、自分よりも先に、相手がくじけてしまっては、本末転倒だ」

 ということになるのではないだろうか?

 それを考えると、

「完全犯罪」

 というものの研究というのは、

「精神的に、どこまで耐えられるか?」

 ということではないだろうか?

 そのためには、

「ロボットのような、精神力を持っていることであり、そのためには、洗脳に近いような、絶対的な命令には従う」

 という人間が不可欠であるということ。

 それが、

「ロボット開発と同じ発想になる」

 ということあろう。

 さらに、タイムマシンの発想としては、

「ロボット開発」

 というものとの接点として、

「次の瞬間に、無限に広がる可能性を打破する」

 という、ロボット開発と同じ発想と、

「次の瞬間」

 としても、未来が、

「いずれは現実となる」

 と考えることで、

「完全犯罪というものが、完成する」

 ということになるのだろう。

 だから、悪の秘密結社の研究員である市場博士は、

「今の時代において、なかなか開発が進まない」

 と言われるこの二つを、あえて、

「完全犯罪」

 という観点から、考えていくというのであった。

 そして、

「警察側」

 ということでの開発研究者として、二宮博士は、

「三すくみ」

 と、

「カプグラ症候群」

 というものを中心に考えている。

 実は、彼の中にも、

「ロボット開発」

 と、

「タイムマシンの問題」

 というもの、浮かんできている。

 その中で、さらに進んだ発想として生まれてきたのが、

「三すくみ」

 と、

「カプグラ症候群」

 であった。

 これは、

「完全犯罪」

 というものを考えた時、漠然と考えるよりも、何か一つをサンプルとしてと考えた時、浮かんできたのが、

「交換殺人」

 というものであった。

 彼は、

「警察という立場ではなく、この世には、完全犯罪などありえない」

 と言われる発想からあえて、

「できない完全犯罪の完成を考えよう」

 という、

「犯罪者側の立場」

 というものから発想を温めたのである。

 だから、

「三すくみ」

 という発想での、

「抑止力」

 というものが浮かんできて、市場博士が、やっと完全犯罪に、洗脳などの、

「精神的な発想が不可欠だ」

 ということに至った経緯を通り越し、さらに、先に見える、

「洗脳」

 という発想から、

「カプグラ症候群」

 というものを思い浮かべたのだ。

「カプグラ症候群」

 というのは、比較的最近の考えかたということで、洗脳というものを、犯罪だけでなく、他の世界にも活用するということから生まれた発想であるから、いずれは、悪の秘密結社も、この、

「カプグラ症候群」

 というものを、いかに、犯罪に限らず、自分たち組織が暗躍するための洗脳としての発想のバイブルでもあるということで、考えるようになると、二宮博士は考えるのであった。

 実際に二宮博士は、市場博士の、

「何歩も先を歩いている」

 と自覚している。

 実際に、警察組織とすれば、

「この世に、悪の秘密結社が存在していて、相手にも自分たちと同じような、頭脳集団がいて、犯罪に対して研究している」

 ということは分かっていた。

 もちろん、

「悪の秘密結社」

 といわれる連中も、

「警察組織の動向はある程度把握しているので、もちろん、警察が、悪の組織に対して特化した研究チームを形成している」

 ということくらいは把握している。

 お互いに把握しながら、相手には秘密が漏れないように、そして、自分たちの発想が相手よりも上回っているということの証明として、相手が何を考えているのかという研究も、しっかりとそれぞれで行っているといってもいいだろう。

 そんな組織において、それぞれが、気にかけているということがあった。

 それが、

「先に動いてはいけない」

 という発想で、

「三すくみ」

 と、

「交換殺人」

 というものの発想であった。

「これが抑止力ということになるので、それぞれに、

「ほとんど同じ発想のもとに、お互いをけん制している」

 ということから、

「相手よりも先に動かない」

 という、精神的に苦しい立場であっても、意外と、そこには耐えられると考えているのであった。

 自分から先に動かないということは、

「動いてはいけない」

 という発想ではなく。

「相手が動くように、こっちからけん制する」

 というポジティブな考えを持つことが大切なのだ。

 そんな発想をいかに、今後進めていくかというのを考えると、

「それこそが、完全犯罪というものではないだろうか?」

 と考えてしまうのであった。


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