第2話
モルスはエグラウス家の都だった。十六歳になったウフは王子として勉学と鍛錬に励んでいた。十六ともなると勇敢な佇まいになる。貴族としての誇りもあるからさらに大人びても来る。
あの日以来、ウフは修行を徹底していた。そのおかげでウフはすでに騎士の手に負えない魔物や山賊に何度も倒していた。
九月になるとモルスで大きな祭りが始まる。一週間にも及ぶ祭りは町を大いに賑わせる。特に闘技大会は祭りの人気イベント。世界から強者が集まって最強を決めるのだ。
ウフはこの大会にもちろん出場し、本戦まで勝ち上がった。優勝賞品の金のバラを妹へ渡すため。
ウフは容易く決勝までやってきた。控室。ウフの友人のベオンは聞いた。
「なあ、どうだったよ。ここまで?」
「それは――」
一回戦は剣士だった。名は覚えていない。長髪の髭のおっさんだった。二刀流で一気に距離を詰めてきて斬りかかってくるもんだから僕は距離を取りながら魔法で応戦した。
このおっさんが案外厄介。いくら離しても詰めてくるし、魔法も簡単に躱されちゃう。かといって近距離でやりあっても負けそうだった。剣の腕に圧倒的な差があった。
つまるところ僕はすでに負けていた。だからこっそりと能力を使った。自分の体を戦士の肉体に変貌させた。筋骨隆々のやつ。見た目はそうじゃない。ステータスだけ。
するとおっさんの攻撃なんて蠅みたいなもの。対してこっちは渾身。一撃でKO。
二回戦は魔術師だった。キザなお兄さんでバルファルト様、バルファルト様って何度も名乗ってたから名は覚えていない。キノコヘアのお兄さんね。杖を振るって魔法を飛ばしてきた。
こういう相手が一番やりやすい。僕は身体が軽い方だから一気に距離を詰めて、その分力も弱いけど相手が魔術師なら素手でもダメージが入る。だから杖を振るうタイミングを読んで詰めて叩いた。
はずが、キザだけじゃなくて案外賢かった。杖はフェイクで無くても詠唱できるみたい。シールド魔法で僕の攻撃を弾いて、近接の魔法刃で僕を倒しにかかってきた。
なんとかそれは避けたんだけど、バルファルトさんね、なかなか面倒くさい。今度は魔法を連発してきて距離を詰められなくなった。
まぁ僕のスピードと魔法耐性じゃ足りないってこと。だから僕は自分の肉体をそれとなく魔物に変えてみた。魔物でトップクラスのスピードを誇る、チータス。四足歩行の魔獣さ。もちろん中身だけ。
何度もこの手を使っているからバル、、なんだっけ、はワンパン。
……って説明したら長くなるから
「――強敵ばかりだったよ。いい大会だね」キリッ。
「ああそうかい?」
決勝戦。
門から出てきたのは鎧を着こんだお姉さんだった。女騎士のエリザさん。
「王子様でも手加減しないわ。覚悟しなさい」
「もちろん。対戦よろしくお願いします」
「生意気!」
騎士は重量がある。こうなると思った通り。 エリザは距離を詰めて叩いてくる。
僕が真面目に剣で勝負しても負けるだけ。だって相手は鎧を着こんでいる。剣が通りにくいし、耐久戦になれば高確率で負ける。
騎士道は称賛するけれど、本気で戦ってこその闘技大会。
「全力でやらせてもらうよ!」
となると、僕は空へ飛んで魔術を連発する。
すでに僕の体は魔術師の肉体になっている。キノコヘアじゃないけど。コピー元はえっと、名前なんだっけ。まぁ二回戦のお兄さん。
「卑怯よ!」
「僕は魔法も得意なんだ」
「ぐぬぬ……」
エリザは不動。魔法の雨を必死に耐えている。いつまで続くかな。
輝青の雨と砂埃が耽る舞台。数十発を遠距離から入れまくった。
「どうかな?」
「どうってことないわ!」声は背後。
「なにっ!?」
僕は剣の一撃を浴びて地面へ叩きつけられた。そのまま転がって脱ぎ捨てられた鎧にぶつかった。見てみればエリザは下着だった。
「恥ずかしくないのかな」
「全力なのはこっちも同じってこと。手加減しないって言ったでしょ?」
「騎士の癖に生意気」
「今は剣士でした!」
今度は素早く果敢に斬りかかってきた。スピードがかなりある。いくら鎧を脱いだにしても速い。そうか、魔法で身体強化しているのか。
こうなるとキツイ。目のやり場に困るのもそうだけど、普通に強い。剣の威力にしても異常。決勝の相手ってだけはある。
「奥の手を使うか」
「やってみなさい!」
斬りかかったそれを躱し、僕は再び肉体を変化させる。覚えている肉体は十三個。でも今から使うのは十四個目――全ての融合。究極の形態。
筋力、スピード、魔術。その全てを極限まで到達させた。最強の肉体。名前は、、無い!
そこからは一方的だった。圧倒的なフィジカルでエリザをぶっ飛ばし、スピードで追撃をして、魔術でトドメを刺した。
なお、全てと言ったが全てではない。人の言葉を信じすぎないように。
こういった形でウフは金のバラを妹へ届けた。墓石は金が映ったのか輝いていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます